作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。
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夜の深い深い海、月明かりが差し込んで飛沫に色を付けている。円形のテーブルには、真っ白のテーブルクロスがかかっている。3:1に分けられた椅子。片側にはこのリムサの主メルウィブが座し、その対面にはグリダニアの著名な道士達。ラヤ・オ・センナ、ア・ルン・センナ、そして、アンフェルツィート。
護衛、という予定の筈だったのに。そう、当の本人縮こまっていた。鎮撫の儀を為した、白魔道士の彼女には、当然相応の地位があるのだが、ラヤ・オとア・ルンが護衛という名目で騙さねば表舞台に出てこない程に引っ込み思案でその自覚もない人物であった。
妹達に美味しいものを食べさせてやりたいとの長女カヌ・エ・センナの計らいでもあり、この度見付かった北部森林のバハムートの迷宮に対する、防衛と警戒の意識共有の為でもあり、そして何よりグリダニアの角尊である二人とそれを支えるアンフェルツィートへの自然調査依頼の交渉の場でもあった。
この重要な場に、リムサから出せる最高級の食事を。そうして彼女、アルティコレートは指名されたのである。まあ、カヌ・エ様ともあれば殆どの調理師は呼び出すことが出来るだろう。彼女が提督の呼び出し以外を受け付けない事としているのも恐らく選択理由のひとつであったと考えられる。
アルティコレートとアンフェルツィートは冒険者仲間であり、それ故にまるで懇談会のようだとアルティコレートは評したのだが。
海の幸を主にした料理が並ぶ中、真剣に四人が話す姿をアルティコレートは遠目に眺めていた。
ラグナロク級第三艦。
ダラガブはバハムートの拘束艦であったのだ。そして、其処に残されたものは、つまりどうなっていることか……
かつてアルティコレート達がもたらしたその答えは、今ウェントブリダ達の手で確固たるものへと変わっている。
「バハムートの眷属と化していた、か……」
「はい、恐らくは……あの方も。厳戒のもとに置くべきであろうことは、恐らくは変わりません」
国の為、防護の為。話すアンフェルは珍しく真剣だった。
それはまた、何れ話すとして。
一通りの食事が平らげられ、おおよその話し合いも終わり、その真剣な空気をわたくしは破りに行く。
メインディッシュは既に出た後だけれども、こっちだってわたくしにとってはメインディッシュだ。
「御話お疲れ様ですわ、本日のデザート……ザッハトルテでございます。ふふっ、提督もたんと召し上がってくださいまし」
進み出て差し出す、黒くなめらかなケーキに、目を輝かせる姉弟と、喉を鳴らす猫みたいなエレゼンと。
満足そうに上品な笑い方を見せる、提督の姿がわたくしには御馳走だった。
護衛、という予定の筈だったのに。そう、当の本人縮こまっていた。鎮撫の儀を為した、白魔道士の彼女には、当然相応の地位があるのだが、ラヤ・オとア・ルンが護衛という名目で騙さねば表舞台に出てこない程に引っ込み思案でその自覚もない人物であった。
妹達に美味しいものを食べさせてやりたいとの長女カヌ・エ・センナの計らいでもあり、この度見付かった北部森林のバハムートの迷宮に対する、防衛と警戒の意識共有の為でもあり、そして何よりグリダニアの角尊である二人とそれを支えるアンフェルツィートへの自然調査依頼の交渉の場でもあった。
この重要な場に、リムサから出せる最高級の食事を。そうして彼女、アルティコレートは指名されたのである。まあ、カヌ・エ様ともあれば殆どの調理師は呼び出すことが出来るだろう。彼女が提督の呼び出し以外を受け付けない事としているのも恐らく選択理由のひとつであったと考えられる。
アルティコレートとアンフェルツィートは冒険者仲間であり、それ故にまるで懇談会のようだとアルティコレートは評したのだが。
海の幸を主にした料理が並ぶ中、真剣に四人が話す姿をアルティコレートは遠目に眺めていた。
ラグナロク級第三艦。
ダラガブはバハムートの拘束艦であったのだ。そして、其処に残されたものは、つまりどうなっていることか……
かつてアルティコレート達がもたらしたその答えは、今ウェントブリダ達の手で確固たるものへと変わっている。
「バハムートの眷属と化していた、か……」
「はい、恐らくは……あの方も。厳戒のもとに置くべきであろうことは、恐らくは変わりません」
国の為、防護の為。話すアンフェルは珍しく真剣だった。
それはまた、何れ話すとして。
一通りの食事が平らげられ、おおよその話し合いも終わり、その真剣な空気をわたくしは破りに行く。
メインディッシュは既に出た後だけれども、こっちだってわたくしにとってはメインディッシュだ。
「御話お疲れ様ですわ、本日のデザート……ザッハトルテでございます。ふふっ、提督もたんと召し上がってくださいまし」
進み出て差し出す、黒くなめらかなケーキに、目を輝かせる姉弟と、喉を鳴らす猫みたいなエレゼンと。
満足そうに上品な笑い方を見せる、提督の姿がわたくしには御馳走だった。
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根なし草でないことは、とても幸福な事のように思うのよ。
冒険者も、何も力仕事だけが本業という訳ではない。普段は調理師として暮らし、リムサ・ロミンサで屋台を立てる等もするアルト。相棒のクァールと狩人として旅し、旅先で休む事も少なくないウェント。隠者の庵か、或いは碩老樹瞑想窟か、幻術士として祈りを捧げるアンフェル。戦うこと以外にも、生き方は様々で、稼ぎ方も様々で。
ただ、わたくし達には同じひとつの帰る場所がある。
仮宿、と呼ばれる地下一階建て、地上二階建ての木製の小屋。ギルではない、ちょっとしたある利害関係を持って家主から借りているこの家が、わたく達の帰る場所だ。
本来は、ReCは、『カミサマ』の奇縁を共有する者達だけの、小さな小さな集団だった。けれども、今は、此処に帰ってくる他人もいる。
いや、他人なんてよそよそしい。もう、家族なのだから。
ReCの仮宿のベルがなる。
その時わたくしはアンフェルが貰ってきた大量のチョコレートの一部を摘まんでいて、手に掴んでいたひとつを口に放り込んで扉へ向かう。
このところ、アンフェルの下には、アンフェルを抱き込もうという贈り物が絶えないとかなんとか。まあ、彼処の道士は、世襲制に近いものがある。ぱっと出から道士になりあがり、しかも夫を持たないとなったらなあ……
「はーい、どなたかし……」
「ただいま?」
ちゃんと顔を見なくたって、帰還の言葉に疑問符がつかんかぎりの語調を使う声の主は……
「レイネ、お帰りなさい!」
「なんだ、レイネ。仕事は一段落ついていたのか」
「うん、未だ中休みだけど」
コトシロ レイネ。
わたくしとバハムートの迷宮の攻略も共にしていた、ミコッテの黒魔道士。自信のない、物腰柔らかな振る舞いとは裏腹に、わたくしのパーティのダメージソースだ。
彼女は冒険者である以前に、一人の会社員でもあった。仕事を持ち込んで旅の傍らこなしていた事もある。
最近は仕事の方が忙しくて、冒険に出られないだけでなく、仕事場傍の宿に泊まっていて、中々此方にも戻ってこれずにいたのだ。
「中休みでも、帰ってきてくれて嬉しいわ!いま晩御飯を仕上げるから、其処の甘味でも摘まんでいて!」
「ユイを起こしてくる、昼寝の真最中だったのでな」
いつの間にか上階から降りてきていたウェントが、足音を立てて階段をかけ上がる音を聞きながら、わたくしは調理場へと目を向ける。其処には夕方から煮込んでいたある肉があった。
「思ったより柔らかく仕上がるんだね、流石アルトだよ」
「その分時間は必要としたのだけれども。下処理をウェントがしてくれたから割と手早く済んだのだわ」
今日の晩御飯は、ベアシチューなのです。北部森林でリスキーモブとして指定されている大熊、フェクダの肉を使った豪華なものだ。リスキーモブは今は個人宛にそれぞれ別のものが指示されていて、わたくしの担当がこのフェクダだった。
「彼処まで大柄なものは久し振りに見たものだがね」
「……これ、一部に過ぎないんでしょ」
「ええ、残りは干物にするつもりでいるわ」
狩った後、ウェントにその旨を伝えた処あっさり了承頂いて下処理をしてもらえた。皮はケヴァさんのところに送ったそうで、彼女にも大変喜ばれたという。爪はアンフェルが飾りに出来ないか試行錯誤しているようだけれども、わたくしが手掛けるのはやはりこの肉の方。
「いのちを無駄にしない、って。こういうことを言うんだよねアルトちゃん。……おいしいよ」
「ふふふ、有難うアンフェル」
ちょっと勝手にチョコレートを溶かし込んだりしたけれども、貴女はこれの送り主に応えたりしなさそうだから良いわよね?なんて笑いつつ。
「今日はゆっくりしていってよね、レイネちゃん。此処はわたくし達の家なのだもの」
「うん、そうね。お邪魔になります」
「家族だから邪魔じゃないし」
「あっ、そうだね。ごめんユイ」
晩御飯の団欒の席は、もう少しだけ続くのです。
冒険者も、何も力仕事だけが本業という訳ではない。普段は調理師として暮らし、リムサ・ロミンサで屋台を立てる等もするアルト。相棒のクァールと狩人として旅し、旅先で休む事も少なくないウェント。隠者の庵か、或いは碩老樹瞑想窟か、幻術士として祈りを捧げるアンフェル。戦うこと以外にも、生き方は様々で、稼ぎ方も様々で。
ただ、わたくし達には同じひとつの帰る場所がある。
仮宿、と呼ばれる地下一階建て、地上二階建ての木製の小屋。ギルではない、ちょっとしたある利害関係を持って家主から借りているこの家が、わたく達の帰る場所だ。
本来は、ReCは、『カミサマ』の奇縁を共有する者達だけの、小さな小さな集団だった。けれども、今は、此処に帰ってくる他人もいる。
いや、他人なんてよそよそしい。もう、家族なのだから。
ReCの仮宿のベルがなる。
その時わたくしはアンフェルが貰ってきた大量のチョコレートの一部を摘まんでいて、手に掴んでいたひとつを口に放り込んで扉へ向かう。
このところ、アンフェルの下には、アンフェルを抱き込もうという贈り物が絶えないとかなんとか。まあ、彼処の道士は、世襲制に近いものがある。ぱっと出から道士になりあがり、しかも夫を持たないとなったらなあ……
「はーい、どなたかし……」
「ただいま?」
ちゃんと顔を見なくたって、帰還の言葉に疑問符がつかんかぎりの語調を使う声の主は……
「レイネ、お帰りなさい!」
「なんだ、レイネ。仕事は一段落ついていたのか」
「うん、未だ中休みだけど」
コトシロ レイネ。
わたくしとバハムートの迷宮の攻略も共にしていた、ミコッテの黒魔道士。自信のない、物腰柔らかな振る舞いとは裏腹に、わたくしのパーティのダメージソースだ。
彼女は冒険者である以前に、一人の会社員でもあった。仕事を持ち込んで旅の傍らこなしていた事もある。
最近は仕事の方が忙しくて、冒険に出られないだけでなく、仕事場傍の宿に泊まっていて、中々此方にも戻ってこれずにいたのだ。
「中休みでも、帰ってきてくれて嬉しいわ!いま晩御飯を仕上げるから、其処の甘味でも摘まんでいて!」
「ユイを起こしてくる、昼寝の真最中だったのでな」
いつの間にか上階から降りてきていたウェントが、足音を立てて階段をかけ上がる音を聞きながら、わたくしは調理場へと目を向ける。其処には夕方から煮込んでいたある肉があった。
「思ったより柔らかく仕上がるんだね、流石アルトだよ」
「その分時間は必要としたのだけれども。下処理をウェントがしてくれたから割と手早く済んだのだわ」
今日の晩御飯は、ベアシチューなのです。北部森林でリスキーモブとして指定されている大熊、フェクダの肉を使った豪華なものだ。リスキーモブは今は個人宛にそれぞれ別のものが指示されていて、わたくしの担当がこのフェクダだった。
「彼処まで大柄なものは久し振りに見たものだがね」
「……これ、一部に過ぎないんでしょ」
「ええ、残りは干物にするつもりでいるわ」
狩った後、ウェントにその旨を伝えた処あっさり了承頂いて下処理をしてもらえた。皮はケヴァさんのところに送ったそうで、彼女にも大変喜ばれたという。爪はアンフェルが飾りに出来ないか試行錯誤しているようだけれども、わたくしが手掛けるのはやはりこの肉の方。
「いのちを無駄にしない、って。こういうことを言うんだよねアルトちゃん。……おいしいよ」
「ふふふ、有難うアンフェル」
ちょっと勝手にチョコレートを溶かし込んだりしたけれども、貴女はこれの送り主に応えたりしなさそうだから良いわよね?なんて笑いつつ。
「今日はゆっくりしていってよね、レイネちゃん。此処はわたくし達の家なのだもの」
「うん、そうね。お邪魔になります」
「家族だから邪魔じゃないし」
「あっ、そうだね。ごめんユイ」
晩御飯の団欒の席は、もう少しだけ続くのです。
【グランドカンパニー】
厄神少女と呼ばれ、精霊の声を聞けない者でありながら道士に上り詰めた者。
彼女に隠された秘密と、カヌエとの関係を暴く。
【インスタンスダンジョン】
タムタラの墓地で行われるという、エッダとアヴィールの結婚式。
其処に招待された、アルト、ユイ、ウェント、アンフェルが見た不幸な奇跡とは。
■忘却の乙女と眠る旧都 1 2 3 (修正中)
アムダプール市街へ、白魔道士として協力を求められるアンフェル。
アムダプール市街へ、白魔道士として協力を求められるアンフェル。
死の眠りについたかのような地で、自分の「生」を問う。
【レイド】
■バハムートの迷宮/Waentbryda 1 2 3 4
【フリーカンパニー】
【ジョブ/クラス】
その彼女をナイトにした、小さな娘とのきっかけの話。
■自然のちから 1 2 3
■宝玉とは 1
【キャラクター長編】
【FATE】
【単発】
*日常小ネタ
1 2 3 4......
【キャラクター構想メモ】
Oblige
余り、リムサ・ロミンサの地にエレゼンの姿は馴染みがない。今は日中は冒険者の姿を散見するとはいえ、日が沈めば冒険者ギルドを除いてはその姿は稀となる。
そんな折、リムサ・ロミンサの入口と言ってもよいブルワークホールは厳重警戒が敷かれていた。客人の中身を思えば当然とも言える厳戒体制の中、金髪の調理師姿のエレゼンがアドミラルブリッジの奥へと姿を消していく。
それを咎める者は誰も居ない。彼女が誰で、何者であるかは黒渦の皆のよく知る処であり、そしてまた何故この場に彼女がいるのかも、容易に想像がつくからであった。
羨望からか、一人の黒渦の兵士であるミコッテが溜め息をつく。直後、彼女の耳は空を切る何かの音を捉えて視線を上げた。原因である、麻の小袋を反射的に捉えて拡げると、その中には堅焼きのクッキーが数枚納められていた。
慌てて見やれば、エレゼンの調理師がその姿をみてさぞ面白そうに笑っている。いつの間にか羨望の視線はミコッテの兵士の方に向いていた。
「好きになさい」
俄に兵士達が騒がしくなるが、調理師が二度兵士達を振り返る事はなかった。
黒渦団の一員であることを、意識する事は滅多にない。稀代の調理師であるかのように、持て囃されていることは知っている。この地がウルダハでなくて本当に良かったとわたくしは思う。でなければ、権力者の求めに応えるしかない日々が直ぐ其処に迫っていただろうし、先のように気紛れで贈るなんて事は許されない事だろう。
提督でなければ、わたくしを拘束することは敵わない。そんな見立てがわたくしの自由を守っているのは重々承知の上だ。
だからこそ、提督の求めには唯一必ず応えることにしている。
しかし、今日の子も驚く顔の可愛かったこと。出来る限り新参の兵士やこの悪戯を知らなさそうな相手を狙って菓子を投げ渡すのは、わたくしの密かな楽しみだ。提督に呼ばれる場の殆どではわたくしとて武装解除をしている都合、教われては無事に済まない。貴人として護衛される礼のつもりもまたある。
「……しかし、相手が相手では懇談会の気分ね」
今日料理を振る舞う相手を思い、苦笑い。付け慣れない眼鏡のズレを直してから、わたくしは腰のスキレットに触れた。
未だ、真新しいスキレット。アーティザンと呼ばれる、ある高名な職人の作である。間に合って良かったと、心底思う。
「最高のディナータイムを。今夜を忘れられない思い出にしてあげますわ」
そんな折、リムサ・ロミンサの入口と言ってもよいブルワークホールは厳重警戒が敷かれていた。客人の中身を思えば当然とも言える厳戒体制の中、金髪の調理師姿のエレゼンがアドミラルブリッジの奥へと姿を消していく。
それを咎める者は誰も居ない。彼女が誰で、何者であるかは黒渦の皆のよく知る処であり、そしてまた何故この場に彼女がいるのかも、容易に想像がつくからであった。
羨望からか、一人の黒渦の兵士であるミコッテが溜め息をつく。直後、彼女の耳は空を切る何かの音を捉えて視線を上げた。原因である、麻の小袋を反射的に捉えて拡げると、その中には堅焼きのクッキーが数枚納められていた。
慌てて見やれば、エレゼンの調理師がその姿をみてさぞ面白そうに笑っている。いつの間にか羨望の視線はミコッテの兵士の方に向いていた。
「好きになさい」
俄に兵士達が騒がしくなるが、調理師が二度兵士達を振り返る事はなかった。
黒渦団の一員であることを、意識する事は滅多にない。稀代の調理師であるかのように、持て囃されていることは知っている。この地がウルダハでなくて本当に良かったとわたくしは思う。でなければ、権力者の求めに応えるしかない日々が直ぐ其処に迫っていただろうし、先のように気紛れで贈るなんて事は許されない事だろう。
提督でなければ、わたくしを拘束することは敵わない。そんな見立てがわたくしの自由を守っているのは重々承知の上だ。
だからこそ、提督の求めには唯一必ず応えることにしている。
しかし、今日の子も驚く顔の可愛かったこと。出来る限り新参の兵士やこの悪戯を知らなさそうな相手を狙って菓子を投げ渡すのは、わたくしの密かな楽しみだ。提督に呼ばれる場の殆どではわたくしとて武装解除をしている都合、教われては無事に済まない。貴人として護衛される礼のつもりもまたある。
「……しかし、相手が相手では懇談会の気分ね」
今日料理を振る舞う相手を思い、苦笑い。付け慣れない眼鏡のズレを直してから、わたくしは腰のスキレットに触れた。
未だ、真新しいスキレット。アーティザンと呼ばれる、ある高名な職人の作である。間に合って良かったと、心底思う。
「最高のディナータイムを。今夜を忘れられない思い出にしてあげますわ」
聖アダマ・ランダマ教会には、身寄りのない者達の墓が多い。死した冒険者が得るものが墓石だけとよく言われるのは、冒険者の出自や縁者が殆どの場合分からないまま終わることが多いからであるかもしれない。
今の私達であると、もしかしたら縁者を騙る者もあるやもしれないが……
「今度こそ、誰にも妨げられる事なく安らかに眠ってくれ」
レイヨが逃げるように去ってしまい、私達は動く力を失った一人の女性の遺体をそっと棺に収めてこの場に戻ってきた。私が彼女を墓石の下に用意された石棺に輸送用の木棺ごと横たえると、四人がかりで石棺の蓋を閉じた。
未だ、墓石は壊されたまま。
また相応しい石を探しておいてやろう。恐らく、私達による二度目の死も、痛く恐ろしいものであっただろうから、せめてその詫びに。
「おやすみなさい、リアヴィヌ」
四人の中で一番関係の深かったであろう、アルトが立て膝をつき、祈りを捧げた。神官にもみえる彼女の学者の装いは、ことこの場においては神聖なものに見えた。
「にしても、またヴォイドなんだ」
「力求める者の影にヴォイドあり、とも言えるのよユイ。彼らは何時も、弱い者の心の闇を狙ってる」
呆れるようなユイの呟きに、アルトは心底憎たらしいといった風に吐き捨てた。彼女がヴォイド嫌いなのは今に始まった事ではないし、タムタラのエッダに対する態度も相当辛辣なものだった。
それは、彼女の学者としての、そして何より黒魔としての、経験が生んだ嫌悪感であったのだろう。だが、ふと気付いた事がある。
彼女は移動の足にアーリマンを使っている。ヴォイドの妖異であると分かりながら、何故彼女はそのアーリマンを好んで乗るのか。アーリマンの方もヴォイドを嫌悪する彼女に、どうして、どうやってなついたのか。
解散の折、ユニコーンを呼ぶユイ、ボム達を呼ぶアンフェルに続き、何時ものアーリマンを呼び出した彼女に、それとなく問い掛けた。
よじ登る為に羽根に手をかけたまま振り返る彼女の他に、名を上げられた事に気付いたのであろう、アーリマンの大きな一つ目が此方を見た。
「あー、うん。それはね……」
アルトがアーリマンの背を撫でる。アーリマンが幸せそうに目を細めてそれを受け入れている。
「こいつは酔狂な、わたくしの命の恩人なのよ」
今の私達であると、もしかしたら縁者を騙る者もあるやもしれないが……
「今度こそ、誰にも妨げられる事なく安らかに眠ってくれ」
レイヨが逃げるように去ってしまい、私達は動く力を失った一人の女性の遺体をそっと棺に収めてこの場に戻ってきた。私が彼女を墓石の下に用意された石棺に輸送用の木棺ごと横たえると、四人がかりで石棺の蓋を閉じた。
未だ、墓石は壊されたまま。
また相応しい石を探しておいてやろう。恐らく、私達による二度目の死も、痛く恐ろしいものであっただろうから、せめてその詫びに。
「おやすみなさい、リアヴィヌ」
四人の中で一番関係の深かったであろう、アルトが立て膝をつき、祈りを捧げた。神官にもみえる彼女の学者の装いは、ことこの場においては神聖なものに見えた。
「にしても、またヴォイドなんだ」
「力求める者の影にヴォイドあり、とも言えるのよユイ。彼らは何時も、弱い者の心の闇を狙ってる」
呆れるようなユイの呟きに、アルトは心底憎たらしいといった風に吐き捨てた。彼女がヴォイド嫌いなのは今に始まった事ではないし、タムタラのエッダに対する態度も相当辛辣なものだった。
それは、彼女の学者としての、そして何より黒魔としての、経験が生んだ嫌悪感であったのだろう。だが、ふと気付いた事がある。
彼女は移動の足にアーリマンを使っている。ヴォイドの妖異であると分かりながら、何故彼女はそのアーリマンを好んで乗るのか。アーリマンの方もヴォイドを嫌悪する彼女に、どうして、どうやってなついたのか。
解散の折、ユニコーンを呼ぶユイ、ボム達を呼ぶアンフェルに続き、何時ものアーリマンを呼び出した彼女に、それとなく問い掛けた。
よじ登る為に羽根に手をかけたまま振り返る彼女の他に、名を上げられた事に気付いたのであろう、アーリマンの大きな一つ目が此方を見た。
「あー、うん。それはね……」
アルトがアーリマンの背を撫でる。アーリマンが幸せそうに目を細めてそれを受け入れている。
「こいつは酔狂な、わたくしの命の恩人なのよ」
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