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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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心より先には折れぬ槍を。
そう願って造られた槍の柄は、黒檀の心材。
元々小さな樹である黒檀の、その内側に秘められし黒々として美しい様は、大変稀少であることの意味を思い知らせる。

ボルセルの許可を取り、手に取ったそれは木材としてはずっしりと重い。一方でその重さに見合った、耐久性もこの槍の特徴と言えるだろう。

「……凄い。まるで金属槍のようね」
「ですがエボニーは金属にはない木材のしなやかさも持つ。彼女の狙いは其処でしょう」

使われているウーツの合金の、青みがかった黒い金属の表面に溝が彫られ、其処に水色の光の線が奔っている。
魔触媒で固定化された、マテリアのとも、クリスタルのとも言えるその輝きは、最高のエーテル伝導物質である金によって支えられていた。

「物理的な鋭利さの限界を、エーテルの刃で補おうという考えですね」
「それは便利な技術だが……冒険者の装備でも滅多に見ないぞ?」

純粋な強化と言えるその技術が、一般に使われていない理由は確かにある。ただ簡単なことだ。
その技術は失われた筈のものなのだから。

「彼女ですら、使った魔触媒は再利用品かと。こうやって正しく触媒を使える者も稀でしょうが」
「なる程……一般に普及するようなものではないんだな」

ジンの応答に頷き、見惚れるレアヌの前で、イタバシはもう一度、ほうと息を吐いた。

「自分の心のままに作品を作って食い潰れない……化け物ですよ、彼女は」




「誰が化け物だって?」
「いやぁ、褒めていますよ?風の花嫁さん」















「お気に召されましたでしょうか、レアヌ・カトリィ様」

闇夜の青が風のエーテルの描き出す鮮やかな碧へと溶け込んだかのような、二色の美しい長髪。
細い目から覗く、黒曜石の瞳。
堀の深い顔立ちと、陶磁のように白い肌は彼女がルガディンの海の民、ゼーウォルフであることを示している。
翼を畳んだ鳥の意匠の施されたバトルドレスに、ドマの珍しい長弓を背負っている。
バトルドレスに隠れた白いブーツの、綺麗にされてはいても取り切れないすれた跡が、これらの衣装が飾りでは無いことを知らしめていた。


「貴女は……!?」


ジンが驚きを見せるが、其れも仕方の無いことだろう。
先日救った職人の女性が明らかに自分より熟練の冒険者の装いで現れたのだから。
   
「や、ジン君と言ったね。先日は助かったよ、イタバシ君も」

彼女は流れるように膝を折って、エレゼン式の礼をする。

「私はウェントブリダ=ステルウィルフィン。風の花嫁とも呼ばれている者だ」

彼女は忙しい身の上である。
通常、黒衣森は精霊が拒む者の侵入を許さない。現在の森は、霊災の影響かその力も弱まってしまっているが、其れでも事前に精霊にお伺いを立てるのも、立派な習わしである。

今回の彼女の旅は、森を守る者達に宛てる者とは言え、武器の輸送に他ならなかった。お伺いを立てるほどの時間が作れず、しかしながら出来る限り精霊を脅かしたくない。其れが彼女の考えであり、結論があの非武装の強行路であった。

彼女も革細工師である以上、森の恵みを受ける者であったから。
経緯を説明し、改めて彼女は言葉にする。


「危機を救って頂き、本当に感謝しています。有難う」

今度は本当に心からのルガディン式の素朴な礼。余りに深々と頭を下げるものだから、礼を受ける側のジンが慌てて静止しようとしてしまう始末。

「此度の品はその礼をと思い自ら作らせて頂いたものです。受け取って頂けるだろうか」

「ええ、勿論です。大事にさせて頂きましょう」
「はい!有難う御座います!」
「分かったわ、じゃあ使わせて貰おうかな」

三者三様、ながら、それぞれの快諾に。花嫁は嬉しそうに微笑んでもう一つ願い出た。

「有難う、其れは良かった……であれば、もう一つだけ願いがあるのだ」

優しい笑顔。だが、真剣そのものの眼差しで。

「この槍が貴女にとって不要になり、手放すとき。どうかこの槍は……」











「貴女の手で折ってやってほしい」
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