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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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『ソウルクリスタル』は多く、何らかの末裔たる証でもある。わたくしは既に学者のソウルクリスタルを持っているし、学者として戦う時は必ず身に付けている。分からぬ者には唯の石ころ、けれども、魂と記憶が残した結晶は持ち主に秘められた叡智を与える。
このシャトトの魔石もそうであろう事は見当がついていた。


ミルバネス礼拝堂に帰還したわたくしは躊躇う事なくシャトトの魔石をヤヤケさんに手渡した。書物上のそれと一致する上、魔力を持っているこの石。間違いなく、わたくしが持っていていいものではないと、そう思っていた。
その一方で、どうせ戻ってくるんだろうなと思っていたけれど。だってこの一件が無かったら、わたくしは既に呪術士をやめていたのだ。私は何かに引き止められているのだと――そう、抱かざるを得なかった。


人を呼びに礼拝堂を出ようとする、彼女の前で開け放たれていた扉が閉まる。ひとりでに。その様に私も思わず扉を睨む。

「それには及ばん」

響いた声は、ララフェルとはとても思えない。静かで力強い低音だった。

「大罪人ククルカ・タタルカ……!なぜここに! 釈放の許しがおりるはずが……!」

ヤヤケさんが癇癪のように叫ぶ。ククルカ・タタルカ。黒魔道士を名乗る大罪人。100年だなんて到底想像が付かないから、確かに気が触れていたっておかしくはない。
しかしそれを疑うのもまた怖いのは、シャトトの魔石の存在だった。

「『ヴォイドゲート』開かれしとき、大気は邪気に満ち、古の妖異が蘇らん……。
  これを閉ざすは『シャトトの魔石』を授かりし者……」


――この人は、ソウルクリスタルと……黒魔道士の証であると知っているのね。

漠然とした、そんな確信もあったから。だから予言の者として私の名を上げられたときも、いつの間にかシャトトの魔石が私の懐に入り込んでいた事に気付いた時も、其処まで驚きはしなかった。



「Articolate Rosatraum。その『シャトトの魔石』は黒魔法を操る術士の証。
 破壊の力を導く者として、『黒魔道士』を名乗るがよい」


――わたくしに、破壊者が務まるのかしら


ただただ、その重圧だけを抱いていた。


「「破壊の力」を恐れるでない。
そなたなら、その力を従え、
必ずや使命を果たすことができるであろう……」



不相応だと思い続けていたからこそ、私は必死になって黒魔法を、ひいては黒魔道士の鍛練を始めたのであった。


そうしてわたくしは黒魔道士のひとりとなった。
黒魔法を操る、ひとりの破壊者に。
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呪術師ギルドは教会のひとつであるミルバネス礼拝堂に存在する。門を潜り、受付のヤヤケさんに取り次ぎを頼もうとした。その時は当然ながら未だ杖を置くことを考えていた。

杖を置くならば、出来ればわたくしが最後使っていた杖はギルドマスターのココブキさんに預けようと考えていた。正直武器を預ける事が抑止力になるとは思ってはいない。呪術具は彫金技術によって産み出されているものであり、わたくしも作れない訳ではないからだ。けれども、わたくしは学者であり癒し手であり、其処に破壊者のわたしは要らないと考えていた。その象徴として武器を預ける事がひとつの節目になり儀式になろうと思っていたのだ。

「あら、良いところに。Articolate Rosatraum、貴女に果たして貰わねばならない務めがあるのです」
「え、わたくしに?」

そんな目的を告げようとするより早く、受付のヤヤケさんは変な話を持ち出し、ギルドの一員としての協力を義務のように求めてきた。
此れからギルドを抜けも同然の予定だったわたくしはそれを理由に断っても良かった。けれども、私の心を揺さぶるだけの理由が其処には存在した。

「東ザナラーンのハイブリッジへ向かいなさい。異界と現世を繋ぐ空間の裂け目、「ヴォイドクラック」から現れる妖異を倒し、その血を大地に刻むのです」

ひとつは、打ち倒すべき対象が妖異でありしかもその扉が存在するという情報であり、任務内容であったこと。
わたくしはヴォイドと妖異が嫌いだ。身の程知らずの力を望む者達に、ヴォイドの存在は必ず出てくるといっていい。その立ち位置は悪魔が相応しく、人離れした力を餌に契約へと誘う。
契約というものの、どうみても唯の捕食なのだけれど目が眩んだ者は気付く事はない。妖異達の望むものは人の脳髄であったり魔力であったり肉体であったりし、時には妖異は人を変容させて人ならざるものに変えてしまったり、人に乗り移って人の身を思うように改造してみせたりする。
結局あいつらにとって私達は食物か何かでしかないのだ。それなのに言葉巧みに人々を騙す。抵抗出来ない人を好き勝手に玩具にする。信じられない!許せる訳がない!
この世の中には魔物の姿に変えられてその苦痛から人の心を壊してしまったひとだっているっていうのに!

だから少なくとも、そのヴォイドクラックをそのままにしておくという選択肢をとるなんて考えには至らなかったのである。

「ククルカの言葉によれば、そのようにすることで「シャトトの魔石」が手に入るとのこと。「シャトトの魔石」とは、古い寓話に度々描かれる宝石。そもそも、存在するかどうかさえ、怪しい石なのですが……」

もうひとつは、彼女が口にしたシャトトの魔石という存在であった。実在するかすら分からない、寓話の中の宝石。板尾のお嫁さんと名乗るオスッテの冒険者から何時も頂く御気に入りのアクセサリー類に、自らの手でマテリアをはめたくて彫金を学んだ。その最中にも会う機会のなかった魔石をこの目で見られるのかも知れないという事実。
美しいのだろうか。それとも。好奇は人を動かす。わたくしだって冒険者ですもの。


「真相がどうあれ、務めを果たしたなら、この「アルダネス聖櫃堂」へ、まっすぐお戻りなさい。よろしいですね?」
「はいはい、分かっておりますわ。それじゃ、行ってきますわね」

念を押すヤヤケさんには苦笑いを返してわたくしは任地であるハイブリッジに近いドライボーンのキャンプへとテレポした。杖を置くのは、この務めを果たした後でも遅くないか、とそうのんびり考えながら。




「そう言えば、ヴォイドクラックとやらを見たことがない気がするんだけど……」

キャンプ・ドライボーンは聖アダマ・ランダマ教会の傍らに存在する。不滅隊の建物もあるこの地には、難民が数多くたどり着く。また墓地もあることから死とも密接にあり、それを商売とする者もおり、少し窮屈に感じざるを得ない。

早々に其処を出て、アーリマンに乗り東へと向かうと渓谷に掛かる大きな橋が見えてくる。それが目的のハイブリッジであった。橋のどちら側であるかすら聞いていなかったが、ハイブリッジに近付くにつれ、その橋への道を僅かに離れた処に暗い闇のような靄が拡がっているのが目に写った。アーリマンの視線も其方へ向く。


「あれなのかしら?」


調べてみると、レブナント型の妖異が2匹飛び出してきた。沈黙効果を持つ怨嗟の声を上げる知性は少なくとも術者には厄介な妖異。慌ててスリプルを行使する。
相手を眠らせるという能力は巴術士にはないものだ。当然、学者にもない。1人で戦うとき、これまではフェアリーの回復力頼みでごり押す事が殆どだった。DoTにかける詠唱は効果時間に比べて短いものだし、ベインで拡散すれば複数の相手に与える事も出来る。短い間集中して土台作りをした後、回復に専念していれば良かったのは意外と一人旅において頼もしい点であった。
しかし、呪術師はそうはいかない。クルセードスタンスなどという便利なものはないし、INTが高くてもMNDが低ければ攻撃は出来ても回復は劣る。回復しながら攻撃をしようなんて考えていては、どちらも中途半端になって崩されるのが落ちなのである。つくづく、クルセードスタンスが使えるヒーラーはある意味有能であったのだと考えざるを得ない。同時に、そうである呪術師において相手を眠らせ無力化するスリプルが範囲として放てるようになった事がどれ程便利かも思い知らされるのである。各個撃破の為に攻撃しない相手を寝かせておくだけではない。勝てないと思っても相手が眠っている15秒に出来る回復行為で立て直す事だって出来るのだ。
1匹を眠らせ、もう1匹を倒し、もう一度スリプルを行使し、トランスを用いてMPの回復と傷の治癒を行う。フィジクは巴術の基本の基本だもの、アディショナルとしても重宝してる。危なげに2匹を討伐した矢先に足音と共に現れた存在に、わたくしは声をかけられるまで気づかなかった。

「冒険者よ……」

静かな低い声。砂を踏むさくさくと鳴る足音。振り返れば黒の巨躯。杖を構え身構える。そんな私に怯えることなく、武器を構える事もなく。彼は名乗った。

アマルジャ族の術士「カザク・チャー」と。言葉に応え武器を収めれば、彼はわたくしの隣を行き過ぎてあたりを見回した。

丁度、ヴォイドクラックがあった辺りだ。討伐の後妖異の血を刻み込むと、ヴォイドクラックであったのだろう小さな闇は縮むように消えてしまった。
あれを探しているのか、そう思うと気持ちがまた身構える。今度こそ、彼の視線がはっきりとわたくしを捉えた。エレゼンですら敵わない長身による慣れないプレッシャーが強くのし掛かる。

どきっとした。


「今しがた、此の地に流るる「地脈」に、妖異の生き血を捧げし者がおる。……其は、汝に相違あるまい?」

嗚呼、このアマルジャ族はわたくしを探していたのか。偽れるとは思わない。何せ、今此処には死して間も無い妖異の遺体と血濡れた我が手があるのだもの。
静かに頷く。緊張に身が強張る。
アマルジャの彼はわたくしの返答に頷くと、ひとつの石を差し出した。
受け取ってすぐ、わたくしが驚愕を浮かべたのは言うまでもない。


――我輩は務めを成すのみ、汝に「シャトトの魔石」を与えん。


彼はそう言ったけれども。
此れが『ソウルクリスタル』であろうことを学者たるわたくしは既に察しがついていた。


嗚呼、そんなことならこんなことに手を出そうなんて思わなかったのに。
「ねえ、ウェント。次ウェントのところに『カミサマ』が来たらさ」
「うん?どうしたんだ突然」
「わたくしのところに来て助けて、って伝えてくれないかな。わたし、もう限界な気がする」



そうやって愚痴を漏らしたのは何時の事だったかしら。
久しぶりのブロンズレイクの温泉に浸かりながらぼんやりと考える。その目と鼻の先には、手製の黒い染色が施されたブリオーと、黒魔道士のアーティファクトと呼ばれる儀礼装備。遂に此処まで来たことを感慨深く感じながら、わたくしはふと思い返していた。









そもそも、わたくしは余り黒魔法が好きな訳でもない。わたくしはフェアリーが好きだし、学者というジョブも愛している。癒し手を続けてきたプライドもあるし、わたくしは恐らく生涯学者であり続けるであろうとは思う。

黒魔法の前身である呪術を学び始めたのも、他の魔術を学ぶことで何か学者の為に出来る事を探しての事であった。


詠唱を、溜めた魔力と組印によって省略する技法……迅速魔。
他者を蘇生するリザレクに限らず、フェアリーの召喚でも長時間の詠唱を余儀なくされる学者にとって、それが魅力でない筈がない。
呪術と巴術は全く違う魔法である。その為、私は本では無く呪術具となる杖を取り、呪術師ギルドの協力のもといちから始める事になった。






ギルドの者達はララフェルが本当に多かった。呪術はウルダハで信仰されているナルザルなる神様とも深い関わりがあるとのことで、恐らく皆地元の者なのだろう。ララフェルはウルダハ出身が多い。
立って話をするとお互い首が痛いので、わたくしは座って話を聞いた。やはり学者としては文献に興味が沸くのだったが、直接見る事は叶わず、ギルドの者から口伝てで聴くのが常であった。

学ぶことに忠実なのは学者の性だとしても、迅速魔を学び終えたら二度と呪術具を手にする事はないと……初めは思っていたものだ。


呪術師は二属性の魔法を主に操るが、同時にそれによって生ずる自らの魔力傾向……アストラルファイアとアンブラルブリザードを巧みに操る事でMPという制限に縛られる事無く魔法を行使する。
考えていた程単純明快とは行かなかった。手製の衣装を纏い、DPSとして色んな地方も旅をしてみた。癒し手が見ないものも其処にはあったように思う。


「私達癒し手の行動は連続しない。ひとつがひとつの行為として完結しているから、止める事に躊躇いがない」
「偏属性の状態は長くは持ちませんからにぅ。せやのに詠唱を止めるなんて時間の損失だけに済まないにゃ」
「そうね……それに、癒し手と違って明確な必要仕事量の条件がないし」
「火力はあるに越した事がにゃいからにぅ」


呪術師ギルドで知り合った真っ黒い肌の猫とそんなような話をした覚えがある。火力には上限値はない。妥協しても、多くの場合分からないけれども、その妥協点を作るにしても自分で決めるしかない。
直面した瞬間に悩むというのは非常に危ない。一方で殆ど詠唱が完了していればちょっとくらい詠唱を切っても魔法は発動するもので、欲も沸く。


純粋に面白いな、と思った。
戦いに楽しみを見出だしている気持ちに嫌悪感を抱きつつも、覗いた世界が奥の深いものであったことに歓喜の念を抱かざるを得なかった。

そんなところに、事件が絡んだ。自分に課された試験に協力してくれたララフェルの少年が妖異にとりつかれたのだ。それから間も無く迅速魔は得られたが、彼を助けたいと思い呪術を続けた。


「勝ったの、ね……」
「そのようですね」

そうして、呪術師ギルドの面たるメンバーを巻き込んで。わたくし達は妖異を倒した。
だから、其処で杖は置くつもりだったのよね。わたくしの目標であった迅速魔は修得が叶い、わたくしの過失で危険な目に会わせた彼も助けた。
呪術師ギルドとしても、わたくしへ課された課題は一通り終わったといった処だった。きりがいい。そうわたくしは考えていた。


そのまま行方をくらますでもなく、呪術師ギルドに挨拶に上がったのはわたくしが律儀なのかもしれない。囮となったギルドマスターの体調も案じていた。
わたくしがそうすることを彼は知っていたのかしら。そうでなければ、わたくしが二度とギルドを訪れなかったら、どうするつもりだったのかしら。

なにはともあれ、杖を置くことを伝えに来たのに。新たに望まれようだなどと、わたくしはちっとも思っていなかったのである。
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