忍者ブログ
作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

呪術師ギルドは教会のひとつであるミルバネス礼拝堂に存在する。門を潜り、受付のヤヤケさんに取り次ぎを頼もうとした。その時は当然ながら未だ杖を置くことを考えていた。

杖を置くならば、出来ればわたくしが最後使っていた杖はギルドマスターのココブキさんに預けようと考えていた。正直武器を預ける事が抑止力になるとは思ってはいない。呪術具は彫金技術によって産み出されているものであり、わたくしも作れない訳ではないからだ。けれども、わたくしは学者であり癒し手であり、其処に破壊者のわたしは要らないと考えていた。その象徴として武器を預ける事がひとつの節目になり儀式になろうと思っていたのだ。

「あら、良いところに。Articolate Rosatraum、貴女に果たして貰わねばならない務めがあるのです」
「え、わたくしに?」

そんな目的を告げようとするより早く、受付のヤヤケさんは変な話を持ち出し、ギルドの一員としての協力を義務のように求めてきた。
此れからギルドを抜けも同然の予定だったわたくしはそれを理由に断っても良かった。けれども、私の心を揺さぶるだけの理由が其処には存在した。

「東ザナラーンのハイブリッジへ向かいなさい。異界と現世を繋ぐ空間の裂け目、「ヴォイドクラック」から現れる妖異を倒し、その血を大地に刻むのです」

ひとつは、打ち倒すべき対象が妖異でありしかもその扉が存在するという情報であり、任務内容であったこと。
わたくしはヴォイドと妖異が嫌いだ。身の程知らずの力を望む者達に、ヴォイドの存在は必ず出てくるといっていい。その立ち位置は悪魔が相応しく、人離れした力を餌に契約へと誘う。
契約というものの、どうみても唯の捕食なのだけれど目が眩んだ者は気付く事はない。妖異達の望むものは人の脳髄であったり魔力であったり肉体であったりし、時には妖異は人を変容させて人ならざるものに変えてしまったり、人に乗り移って人の身を思うように改造してみせたりする。
結局あいつらにとって私達は食物か何かでしかないのだ。それなのに言葉巧みに人々を騙す。抵抗出来ない人を好き勝手に玩具にする。信じられない!許せる訳がない!
この世の中には魔物の姿に変えられてその苦痛から人の心を壊してしまったひとだっているっていうのに!

だから少なくとも、そのヴォイドクラックをそのままにしておくという選択肢をとるなんて考えには至らなかったのである。

「ククルカの言葉によれば、そのようにすることで「シャトトの魔石」が手に入るとのこと。「シャトトの魔石」とは、古い寓話に度々描かれる宝石。そもそも、存在するかどうかさえ、怪しい石なのですが……」

もうひとつは、彼女が口にしたシャトトの魔石という存在であった。実在するかすら分からない、寓話の中の宝石。板尾のお嫁さんと名乗るオスッテの冒険者から何時も頂く御気に入りのアクセサリー類に、自らの手でマテリアをはめたくて彫金を学んだ。その最中にも会う機会のなかった魔石をこの目で見られるのかも知れないという事実。
美しいのだろうか。それとも。好奇は人を動かす。わたくしだって冒険者ですもの。


「真相がどうあれ、務めを果たしたなら、この「アルダネス聖櫃堂」へ、まっすぐお戻りなさい。よろしいですね?」
「はいはい、分かっておりますわ。それじゃ、行ってきますわね」

念を押すヤヤケさんには苦笑いを返してわたくしは任地であるハイブリッジに近いドライボーンのキャンプへとテレポした。杖を置くのは、この務めを果たした後でも遅くないか、とそうのんびり考えながら。




「そう言えば、ヴォイドクラックとやらを見たことがない気がするんだけど……」

キャンプ・ドライボーンは聖アダマ・ランダマ教会の傍らに存在する。不滅隊の建物もあるこの地には、難民が数多くたどり着く。また墓地もあることから死とも密接にあり、それを商売とする者もおり、少し窮屈に感じざるを得ない。

早々に其処を出て、アーリマンに乗り東へと向かうと渓谷に掛かる大きな橋が見えてくる。それが目的のハイブリッジであった。橋のどちら側であるかすら聞いていなかったが、ハイブリッジに近付くにつれ、その橋への道を僅かに離れた処に暗い闇のような靄が拡がっているのが目に写った。アーリマンの視線も其方へ向く。


「あれなのかしら?」


調べてみると、レブナント型の妖異が2匹飛び出してきた。沈黙効果を持つ怨嗟の声を上げる知性は少なくとも術者には厄介な妖異。慌ててスリプルを行使する。
相手を眠らせるという能力は巴術士にはないものだ。当然、学者にもない。1人で戦うとき、これまではフェアリーの回復力頼みでごり押す事が殆どだった。DoTにかける詠唱は効果時間に比べて短いものだし、ベインで拡散すれば複数の相手に与える事も出来る。短い間集中して土台作りをした後、回復に専念していれば良かったのは意外と一人旅において頼もしい点であった。
しかし、呪術師はそうはいかない。クルセードスタンスなどという便利なものはないし、INTが高くてもMNDが低ければ攻撃は出来ても回復は劣る。回復しながら攻撃をしようなんて考えていては、どちらも中途半端になって崩されるのが落ちなのである。つくづく、クルセードスタンスが使えるヒーラーはある意味有能であったのだと考えざるを得ない。同時に、そうである呪術師において相手を眠らせ無力化するスリプルが範囲として放てるようになった事がどれ程便利かも思い知らされるのである。各個撃破の為に攻撃しない相手を寝かせておくだけではない。勝てないと思っても相手が眠っている15秒に出来る回復行為で立て直す事だって出来るのだ。
1匹を眠らせ、もう1匹を倒し、もう一度スリプルを行使し、トランスを用いてMPの回復と傷の治癒を行う。フィジクは巴術の基本の基本だもの、アディショナルとしても重宝してる。危なげに2匹を討伐した矢先に足音と共に現れた存在に、わたくしは声をかけられるまで気づかなかった。

「冒険者よ……」

静かな低い声。砂を踏むさくさくと鳴る足音。振り返れば黒の巨躯。杖を構え身構える。そんな私に怯えることなく、武器を構える事もなく。彼は名乗った。

アマルジャ族の術士「カザク・チャー」と。言葉に応え武器を収めれば、彼はわたくしの隣を行き過ぎてあたりを見回した。

丁度、ヴォイドクラックがあった辺りだ。討伐の後妖異の血を刻み込むと、ヴォイドクラックであったのだろう小さな闇は縮むように消えてしまった。
あれを探しているのか、そう思うと気持ちがまた身構える。今度こそ、彼の視線がはっきりとわたくしを捉えた。エレゼンですら敵わない長身による慣れないプレッシャーが強くのし掛かる。

どきっとした。


「今しがた、此の地に流るる「地脈」に、妖異の生き血を捧げし者がおる。……其は、汝に相違あるまい?」

嗚呼、このアマルジャ族はわたくしを探していたのか。偽れるとは思わない。何せ、今此処には死して間も無い妖異の遺体と血濡れた我が手があるのだもの。
静かに頷く。緊張に身が強張る。
アマルジャの彼はわたくしの返答に頷くと、ひとつの石を差し出した。
受け取ってすぐ、わたくしが驚愕を浮かべたのは言うまでもない。


――我輩は務めを成すのみ、汝に「シャトトの魔石」を与えん。


彼はそう言ったけれども。
此れが『ソウルクリスタル』であろうことを学者たるわたくしは既に察しがついていた。


嗚呼、そんなことならこんなことに手を出そうなんて思わなかったのに。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
虚向風音
性別:
非公開
P R
忍者ブログ [PR]