作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。
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元々、剣を全く触っていないという訳ではなかった。このエオルゼアの地で弓を取るその前から、私は傭兵であったから。その場にある武器で戦うことは、傭兵にとって必要なスキルのひとつだろう。
だが、飽くまで稼ぐ為に腕を磨いていたに過ぎず、其れを守る為に取ったのには相応の理由があった。
時は遡る。
リムサの料理師ギルドに買い物の為寄っていた時であった。この地、意外と塩はあまり一般に売られておらず岩塩を売っているのもこのリムサのギルドくらいであるのだ。未精製の岩塩はウルダハで掘ろうとすれば掘れるのだが、量を得るなら買うのがはやい。そんな訳で寄ったギルドの方面から、良く知る声の、珍しい感情任せの声が聞こえてきたのだったか。
基本的に、アルトは薄情だ。接触してこない人間には触りだけの関係に終わるし、自分に価値がないと考えるならば他人を笑うことこそあれど善意から咎める事はない。ただ逆に望まれた事のある相手をより深く引き込もうと誘うし、懲りることなく他人の愚痴に付き合ったり何度も何度も同じ事を咎めたり感謝したりして、見る人によれば感情豊かで振り回されているように見えるのかもしれないが。
「よう、ステルウィルフィン。本日は何の用だ?生憎とローザトラウムの奴は取り込み中だがよ」
「岩塩を分けてもらおうと思って来たのだが……あれは何をしているのだ」
ビスマルクではなく、料理師ギルドの方に入るとギルドマスターのリングサスに軽い調子で応対を受けた。岩塩を買いに、というのもこれが初めてではないし、アルトと知己である事は料理師ギルドにおいて周知の事実。その上アルトはこのギルドでは有名人の一人でもある。
紺の上着とズボンの上に、白い前掛けを着けた調理師姿のアルトが、深緑のローブを着たララフェルの少女に何やら怒鳴りたてているのが見えたのだ。
少女は震える手で杖を抱え込んでいる。幻術士だろうか。
「あー、直接は聞いてないがよ。ありゃアイツが養ってた拾い子だ。それがどうも……」
「幾らなんでも危険すぎるわ!特に、ヒーラーは他人の命を預かるのよ!?あんたの力不足で誰かを失って、その事実を一生背負っていく事になるのやもしれないのよ!!」
「……幻術士として冒険者になりたい、と言い出したんだと。その結果があれってこった……やれやれ、店に迄響いてねえかこりゃあ」
成程、気持ちは分からぬ事もない。死なせはせずとも、時にはタンクとして戦うもの達に酷い言葉を浴びせられ、心と杖とを折ってしまう者もいることだろう。肉体的にも、精神的にも心配した結果といえるだろうか。にしても、養い子か……あの若さであるから、さぞ皆を驚かせた事だろう。入れ込み様から見て、時間が短いわけでもあるまい。
それでも、ひとつ気になる事があって私は言葉を漏らした。
「成程な、しかしそれなら呪術士や巴術士もあるだろうに……」
「それがですね」
漏らした言葉に反応する声があり、私は驚いて振り返った。ギルドに常在している調理師の一人、ラティシャであった。彼女は私に寄り、そっと耳打ちした。
「あの子、幻術士がいいんですって。学者のアルティコレートさんの、隣に立ちたいんだそうですよ」
今でも、あの時を思い出すとあの時の緊張も共に思い出して、自分の鼓動の音すら聞こえてきそうな、そんな気がする。
其れくらい、思えば大きな選択だったのだ。当時は思い至った事を、口にせずにいられなかったというただそれだけだったが。
ラティシャに感謝の言葉を述べて、二人の話す奥へと歩み寄った。途中、段差が煩わしくて手摺を強く掴み、思いっきり飛び越え咎められる声を聞いたのは覚えている。
二人のたち位置をよく見れば、壁を背にするララフェルの少女の姿は本当に本当に小さく見えた。私がルガディンで、アルトがエレゼンで、比較的背の高い二種族であり、ララフェルが小人と呼ばれる程に小さい種族であるのもある。
私はアルトの後ろから二人の方へと寄っていった。アルトには死角だったのだろう、気付く様子はなく、ララフェルの少女が見上げるように目があった。
守りたい。
彼女の、小さな身体を。
自立したいと思った、自尊心を。
憧れの存在の隣に立ちたいという、切なる望みを。
その為に、どうすれば良いのか。
私は何となく理解していた。
剣を取れば良いのだ、盾を構えさえすればよい。
「アルティコレート」
「……な、に。ウェント?やだ、驚かせないでよ。今、忙し……」
「私が彼女のナイトになる。それではダメか」
人を護るために、剣と盾を手にするものを……私達はナイトと呼ぶ。
だが、飽くまで稼ぐ為に腕を磨いていたに過ぎず、其れを守る為に取ったのには相応の理由があった。
時は遡る。
リムサの料理師ギルドに買い物の為寄っていた時であった。この地、意外と塩はあまり一般に売られておらず岩塩を売っているのもこのリムサのギルドくらいであるのだ。未精製の岩塩はウルダハで掘ろうとすれば掘れるのだが、量を得るなら買うのがはやい。そんな訳で寄ったギルドの方面から、良く知る声の、珍しい感情任せの声が聞こえてきたのだったか。
基本的に、アルトは薄情だ。接触してこない人間には触りだけの関係に終わるし、自分に価値がないと考えるならば他人を笑うことこそあれど善意から咎める事はない。ただ逆に望まれた事のある相手をより深く引き込もうと誘うし、懲りることなく他人の愚痴に付き合ったり何度も何度も同じ事を咎めたり感謝したりして、見る人によれば感情豊かで振り回されているように見えるのかもしれないが。
「よう、ステルウィルフィン。本日は何の用だ?生憎とローザトラウムの奴は取り込み中だがよ」
「岩塩を分けてもらおうと思って来たのだが……あれは何をしているのだ」
ビスマルクではなく、料理師ギルドの方に入るとギルドマスターのリングサスに軽い調子で応対を受けた。岩塩を買いに、というのもこれが初めてではないし、アルトと知己である事は料理師ギルドにおいて周知の事実。その上アルトはこのギルドでは有名人の一人でもある。
紺の上着とズボンの上に、白い前掛けを着けた調理師姿のアルトが、深緑のローブを着たララフェルの少女に何やら怒鳴りたてているのが見えたのだ。
少女は震える手で杖を抱え込んでいる。幻術士だろうか。
「あー、直接は聞いてないがよ。ありゃアイツが養ってた拾い子だ。それがどうも……」
「幾らなんでも危険すぎるわ!特に、ヒーラーは他人の命を預かるのよ!?あんたの力不足で誰かを失って、その事実を一生背負っていく事になるのやもしれないのよ!!」
「……幻術士として冒険者になりたい、と言い出したんだと。その結果があれってこった……やれやれ、店に迄響いてねえかこりゃあ」
成程、気持ちは分からぬ事もない。死なせはせずとも、時にはタンクとして戦うもの達に酷い言葉を浴びせられ、心と杖とを折ってしまう者もいることだろう。肉体的にも、精神的にも心配した結果といえるだろうか。にしても、養い子か……あの若さであるから、さぞ皆を驚かせた事だろう。入れ込み様から見て、時間が短いわけでもあるまい。
それでも、ひとつ気になる事があって私は言葉を漏らした。
「成程な、しかしそれなら呪術士や巴術士もあるだろうに……」
「それがですね」
漏らした言葉に反応する声があり、私は驚いて振り返った。ギルドに常在している調理師の一人、ラティシャであった。彼女は私に寄り、そっと耳打ちした。
「あの子、幻術士がいいんですって。学者のアルティコレートさんの、隣に立ちたいんだそうですよ」
今でも、あの時を思い出すとあの時の緊張も共に思い出して、自分の鼓動の音すら聞こえてきそうな、そんな気がする。
其れくらい、思えば大きな選択だったのだ。当時は思い至った事を、口にせずにいられなかったというただそれだけだったが。
ラティシャに感謝の言葉を述べて、二人の話す奥へと歩み寄った。途中、段差が煩わしくて手摺を強く掴み、思いっきり飛び越え咎められる声を聞いたのは覚えている。
二人のたち位置をよく見れば、壁を背にするララフェルの少女の姿は本当に本当に小さく見えた。私がルガディンで、アルトがエレゼンで、比較的背の高い二種族であり、ララフェルが小人と呼ばれる程に小さい種族であるのもある。
私はアルトの後ろから二人の方へと寄っていった。アルトには死角だったのだろう、気付く様子はなく、ララフェルの少女が見上げるように目があった。
守りたい。
彼女の、小さな身体を。
自立したいと思った、自尊心を。
憧れの存在の隣に立ちたいという、切なる望みを。
その為に、どうすれば良いのか。
私は何となく理解していた。
剣を取れば良いのだ、盾を構えさえすればよい。
「アルティコレート」
「……な、に。ウェント?やだ、驚かせないでよ。今、忙し……」
「私が彼女のナイトになる。それではダメか」
人を護るために、剣と盾を手にするものを……私達はナイトと呼ぶ。
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どうせ憑依される日など来なさそうなので、折角設定は面白いのだし書いてみたのです。
******
クォーリーミルからは大口の依頼が沢山来る。その為定期的に出向いて革製品や木工品などを納入している。木工はケヴァさんのすすめで始めたものであったが、これが中々に面白く今となっては趣味に留まらずこうやって個人的に依頼を請け負っても遜色ない品質を得るまでとなっていた。
その日もチョコボのアウストに荷物を預け、クァールと共に走り、商品を納入して、其れだけで一日が終わろうとしていた。
薄暗い夕闇が降りようとする中、私は徒歩でクォーリーミルを離れた。このあたりの魔物は然程脅威ではなく、好戦的なゴブリンや密猟者が面倒なくらい。
少し奥に入れば蝙蝠と猪が生息している、ウルズの泉へと繋がる。そう言えば最近ボアの皮を大量に使ったので数が足りなかった事を思い出す。悪いが少しわけて貰おうかと踏み出した。
ウルズの泉には、かつて、ある闘神が封じられていた事を、未だ私は知らないでいた。
「……これくらいあれば当分は十分だろう」
久しぶりに狩りで弓ではなく、剣を取る選択をしていた。ここ暫く、剣を取る機会そのものが多くてね。殆どは剣士としてというより、ナイトとして剣を取る訳なのだが今となっては剣もまた自分にとって身近な得物になっていた。
皮は駄目にならないようその場で後処理をし、ケッドと呼ばれる大型の蟲からは抱えていた血を掬い瓶に詰める。六識の血、と呼ばれるこの腫の溜め込む他種の血は、蟲の体液と混ざって自然と固まらない為錬金術の材料に使われる。
「しかし、此処は豊かだな。砂漠にはない、水と緑に溢れている」
好戦的なボアを避けて奥へと入り、ケッドもボアも少ない奥の水場に立つ大樹の麓に腰掛けた。最奥にはクリスタルのようなものがあり、傍らにはウォータースプライトが多数見受けられる。
豊かである、と思う。此処に限らず、黒衣森は非常に水と緑に溢れている。それは、ザナラーンの砂漠にはない豊かさで。
ただ消費するだけにしてはいけない。この森がずっとこの美しく豊かな森のまま……暮らしていけるような、節度を保った狩人であり、また生産者でありたい。
時間は過ぎる。夜の帳が降りると……僅かに深い紺の靄がかかっているようにも見えた。決して珍しい事ではないが、あまりいい傾向でもない。この黒衣森に、ある蛮神が出るのだ。その名をオーディン。先日の出没の際には私も居合わせ、討伐に参加したが正直二度も闘いたくは――
戻ろう。
本格的に淡いエーテルの光を発しだした靄に、急に気が急いた。
投げ出していた剣を取り、立ち上がり……そうして私はふと後ろを見た。ウルズの泉の、綺麗なクリスタルが其処にある。其れだけなのだが、ふと何かが其処にいるような気がしたのだ。目に見えるものは何もない。振り返って剣をしまい、踏み出そうとして……
身体は動かなかった。
焦る以上に、其れだけでは済まないことに気付かされる。
五感が急速に遠退いていく。自分のものではなく、誰かを通じて、或いは何かを通じて受けているような感覚に変じていく。これには既に覚えがあった。
まるで、『カミサマ』に憑かれたときのよう。だが、もっと自由度がなく、意志も目的も私には伝わってこない。
まるで、これでは。私が誰かの容れ物にされているようではないか。
『…次はオマエが…我が身体に……』
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クォーリーミルからは大口の依頼が沢山来る。その為定期的に出向いて革製品や木工品などを納入している。木工はケヴァさんのすすめで始めたものであったが、これが中々に面白く今となっては趣味に留まらずこうやって個人的に依頼を請け負っても遜色ない品質を得るまでとなっていた。
その日もチョコボのアウストに荷物を預け、クァールと共に走り、商品を納入して、其れだけで一日が終わろうとしていた。
薄暗い夕闇が降りようとする中、私は徒歩でクォーリーミルを離れた。このあたりの魔物は然程脅威ではなく、好戦的なゴブリンや密猟者が面倒なくらい。
少し奥に入れば蝙蝠と猪が生息している、ウルズの泉へと繋がる。そう言えば最近ボアの皮を大量に使ったので数が足りなかった事を思い出す。悪いが少しわけて貰おうかと踏み出した。
ウルズの泉には、かつて、ある闘神が封じられていた事を、未だ私は知らないでいた。
「……これくらいあれば当分は十分だろう」
久しぶりに狩りで弓ではなく、剣を取る選択をしていた。ここ暫く、剣を取る機会そのものが多くてね。殆どは剣士としてというより、ナイトとして剣を取る訳なのだが今となっては剣もまた自分にとって身近な得物になっていた。
皮は駄目にならないようその場で後処理をし、ケッドと呼ばれる大型の蟲からは抱えていた血を掬い瓶に詰める。六識の血、と呼ばれるこの腫の溜め込む他種の血は、蟲の体液と混ざって自然と固まらない為錬金術の材料に使われる。
「しかし、此処は豊かだな。砂漠にはない、水と緑に溢れている」
好戦的なボアを避けて奥へと入り、ケッドもボアも少ない奥の水場に立つ大樹の麓に腰掛けた。最奥にはクリスタルのようなものがあり、傍らにはウォータースプライトが多数見受けられる。
豊かである、と思う。此処に限らず、黒衣森は非常に水と緑に溢れている。それは、ザナラーンの砂漠にはない豊かさで。
ただ消費するだけにしてはいけない。この森がずっとこの美しく豊かな森のまま……暮らしていけるような、節度を保った狩人であり、また生産者でありたい。
時間は過ぎる。夜の帳が降りると……僅かに深い紺の靄がかかっているようにも見えた。決して珍しい事ではないが、あまりいい傾向でもない。この黒衣森に、ある蛮神が出るのだ。その名をオーディン。先日の出没の際には私も居合わせ、討伐に参加したが正直二度も闘いたくは――
戻ろう。
本格的に淡いエーテルの光を発しだした靄に、急に気が急いた。
投げ出していた剣を取り、立ち上がり……そうして私はふと後ろを見た。ウルズの泉の、綺麗なクリスタルが其処にある。其れだけなのだが、ふと何かが其処にいるような気がしたのだ。目に見えるものは何もない。振り返って剣をしまい、踏み出そうとして……
身体は動かなかった。
焦る以上に、其れだけでは済まないことに気付かされる。
五感が急速に遠退いていく。自分のものではなく、誰かを通じて、或いは何かを通じて受けているような感覚に変じていく。これには既に覚えがあった。
まるで、『カミサマ』に憑かれたときのよう。だが、もっと自由度がなく、意志も目的も私には伝わってこない。
まるで、これでは。私が誰かの容れ物にされているようではないか。
『…次はオマエが…我が身体に……』
「此処暫くは優秀な弟子が居たからね。お陰様で集中できたのさ」
「ほう、何時かの品評会に出たという革細工師でありますかな?御会いしたいものですなぁ、今はおいでに?」
「ついさっき迄いたんだがね……時間だ、って去ってったよ」
「どちらにせよ、今頃の彼女は別人だろうからね。居たらその時は……」
まさかこんな時間に急に降りてくる予兆を抱くとは思っていなかった。革細工ギルドを離れ、人気のないグリダニアの細道で一息を付く。関わっていれば何時か知れる事ではあるし、事実としてギルドマスターのケヴァさんや一部にはその謎の体質(?)も知られてはいるのだが、何時も決まって私は『カミサマ』を人気のない場所で待つ。
不便がないわけではないし、昼夜を問わず冒険を望まれるから、大抵は憑依が解けると数日寝込む羽目になる。健康に良いか悪いかと言われたら間違いなく悪いだろうし、寝ない人間は早死にするともいう。
それでも憑依に従うのは……
(今日は、バハムートの迷宮に行くのか……)
『カミサマ』は私がするより上手く私の身体を扱って、私一人では行けない冒険に私を連れ出していく。何処からともなく人の伝手を見付け出し、知らぬ運命を手繰り寄せる。
(しかし、聞いたこともない。このところクリスタルタワーに誘って来たり、アルトに装備を工面させたり、妙に私を強化しようとしていたのは分かるのだが……)
「まあ、取り敢えずはレヴナンツトールに行ってから考えることにしようか」
結局は、私の冒険者と言うことなのかもしれない。所謂性と言うものだな。
レヴナンツトールとは、モードゥナに存在する冒険者の拠点である。
そびえるアラグ帝国の遺産、クリスタルタワー。ガレマールの技術の塊アグリウス。それと心中したミドガルズオルム。更にはクリスタルが大量に産出されるという土地柄もある。
かつては、観光地だったらしいがその面影は微塵もない。代わり、此処には価値ある多くのものが眠っているのだ。私達は冒険者であると同時に開拓者であるとも言えよう。
仲介役の商人が滞在し、エーテライトが他に無く、酒場や暁の血盟の新しい本拠があることもあり、レヴナンツトールは冒険者同士のパーティ募集で賑わう。
(まだ概要も見えてこないが……経験者を募集ばかりだな。其れほど迄に難しい地であるということか)
『カミサマ』がパーティ募集のシャウトに耳を傾けているのを感じながら、私はしばらくタイニークァールの背中を撫でていた。
『カミサマ』の入れ知恵で、経験者でないにも関わらずそのような募集のひとつに混ざる事となった。少し申し訳無く感じていると、『カミサマ』は身を任せてくれれば大丈夫だと笑ったような気がした。
こういうとき、恐らく望めば『カミサマ』は、アルティコレートと挑んだ記憶の数々を私に見せてくれるのだろう。だが私はそうすることはない。やはり、この目で確かめたいと、改めてそう思えば、『カミサマ』はもう一度嬉しそうに笑ったような、そんな気がした。
パーティが円滑に連携行動をとる為に、私達はパーティ通信用のリンクパールを所持している。
パーティを組めば自動的に設定されるその利便性の高さは冒険者の殆どが利用している必需品だ。
「ウェントブリダ、詩人だ。宜しく頼むよ」
「よろしく~」
「よろしくお願いします」
「よろしくです」
リンクパールに触れながら、私は挨拶の言葉を呟いた。パーティに新たなメンバーが加わった事は直ぐに通達されたのか、向こうからも挨拶の言葉が返ってくる。
パーティ構成は……ナ竜詩黒黒白学か。
もう一人のタンクは、ナイトさんが知人のナイトを連れてくるとのこと。ワインポートに集合と言うことで、私は同じくレヴナンツトールでシャウトを聞いていたのだろうパーティメンバーのテレポに相乗りする形で転移した。
ワインポートは、名の通りワインの港、ワインの発信地として発展を遂げた地である。街にはブドウ畑も広がり、その一角には厳重な扉の向こう未だ若いブドウの樹を見ることも出来る。
しかし、私達冒険者はワインを目的としてではなく、また別の目的があってこの地に集まることが多い。
「ウェントブリダさん、こっちですよ」
「ああ、助かる」
ワインポートにテレポした私に手招きしてみせるナイトのミコッテ。
私に背を向け、入り口の方向へと走り出すと青と白の鎧からまろびでているその尻尾がふわふわと揺れていた。
ワインポートを出ると、カストルム・オクシデンスが遠目に見える。更にその傍らにそびえ立つ橙色のクリスタル。
いわゆる偏属性クリスタルに圧倒されて、準備が整うまでそれを見上げてみる。ワインポートの前には一際大きい岩があるのだが、気が付いたら先程のナイトさんも隣に腰かけてクリスタルを見上げていた。
目的地はあのクリスタルの丁度地下。
バハムートを封印していた巨大な拘束具『衛星ダラガブ』。その一部が地に深く突き刺さり、それによってあのようなクリスタルが吹き出したのだとアリゼーは言う。
クリスタルはエーテルの塊。
そしてエーテルは星の資源である。
まるで星の悲鳴か、流血か、涙か。そのようだと、黒魔道士が呟いた。
アリゼーが協力を取り付けたという黒渦団の兵士の案内を得て中へと入れば、黒魔道士の呟きがまるで真であるかのような風景であった。既に今回はこの層の最終ボスを除いた障害は取り除かれているらしい。
お陰でメンバーの案内のもと、ゆっくりとまわりを見て回ることができた。
帝国がかけたのであろう、金属製の黒い橋を渡り、まるで粘性の高い物体が、六角形を基本とする柱を芯として根を張ったかのような独特な雰囲気を持つ空間に降り立つ。ガードであるアラグの防衛機構があったという空洞の向こうには、飛竜の翼のようなものが、同じように偏属性クリスタルに絡み付かれ、覆われていた。
これ迄クリスタルと言えば結晶であった。クリスタルはエーテルの塊なのだから、別におかしい事ではない。けれども、これ程までに曲線に溢れたクリスタルの姿を見たことがあっただろうか。
これだけ見ていると、まるで琥珀のようだと思わされた。
光も差さぬ深い地下は、この琥珀の輝きに照らされていた。
「ほう、何時かの品評会に出たという革細工師でありますかな?御会いしたいものですなぁ、今はおいでに?」
「ついさっき迄いたんだがね……時間だ、って去ってったよ」
「どちらにせよ、今頃の彼女は別人だろうからね。居たらその時は……」
まさかこんな時間に急に降りてくる予兆を抱くとは思っていなかった。革細工ギルドを離れ、人気のないグリダニアの細道で一息を付く。関わっていれば何時か知れる事ではあるし、事実としてギルドマスターのケヴァさんや一部にはその謎の体質(?)も知られてはいるのだが、何時も決まって私は『カミサマ』を人気のない場所で待つ。
不便がないわけではないし、昼夜を問わず冒険を望まれるから、大抵は憑依が解けると数日寝込む羽目になる。健康に良いか悪いかと言われたら間違いなく悪いだろうし、寝ない人間は早死にするともいう。
それでも憑依に従うのは……
(今日は、バハムートの迷宮に行くのか……)
『カミサマ』は私がするより上手く私の身体を扱って、私一人では行けない冒険に私を連れ出していく。何処からともなく人の伝手を見付け出し、知らぬ運命を手繰り寄せる。
(しかし、聞いたこともない。このところクリスタルタワーに誘って来たり、アルトに装備を工面させたり、妙に私を強化しようとしていたのは分かるのだが……)
「まあ、取り敢えずはレヴナンツトールに行ってから考えることにしようか」
結局は、私の冒険者と言うことなのかもしれない。所謂性と言うものだな。
レヴナンツトールとは、モードゥナに存在する冒険者の拠点である。
そびえるアラグ帝国の遺産、クリスタルタワー。ガレマールの技術の塊アグリウス。それと心中したミドガルズオルム。更にはクリスタルが大量に産出されるという土地柄もある。
かつては、観光地だったらしいがその面影は微塵もない。代わり、此処には価値ある多くのものが眠っているのだ。私達は冒険者であると同時に開拓者であるとも言えよう。
仲介役の商人が滞在し、エーテライトが他に無く、酒場や暁の血盟の新しい本拠があることもあり、レヴナンツトールは冒険者同士のパーティ募集で賑わう。
(まだ概要も見えてこないが……経験者を募集ばかりだな。其れほど迄に難しい地であるということか)
『カミサマ』がパーティ募集のシャウトに耳を傾けているのを感じながら、私はしばらくタイニークァールの背中を撫でていた。
『カミサマ』の入れ知恵で、経験者でないにも関わらずそのような募集のひとつに混ざる事となった。少し申し訳無く感じていると、『カミサマ』は身を任せてくれれば大丈夫だと笑ったような気がした。
こういうとき、恐らく望めば『カミサマ』は、アルティコレートと挑んだ記憶の数々を私に見せてくれるのだろう。だが私はそうすることはない。やはり、この目で確かめたいと、改めてそう思えば、『カミサマ』はもう一度嬉しそうに笑ったような、そんな気がした。
パーティが円滑に連携行動をとる為に、私達はパーティ通信用のリンクパールを所持している。
パーティを組めば自動的に設定されるその利便性の高さは冒険者の殆どが利用している必需品だ。
「ウェントブリダ、詩人だ。宜しく頼むよ」
「よろしく~」
「よろしくお願いします」
「よろしくです」
リンクパールに触れながら、私は挨拶の言葉を呟いた。パーティに新たなメンバーが加わった事は直ぐに通達されたのか、向こうからも挨拶の言葉が返ってくる。
パーティ構成は……ナ竜詩黒黒白学か。
もう一人のタンクは、ナイトさんが知人のナイトを連れてくるとのこと。ワインポートに集合と言うことで、私は同じくレヴナンツトールでシャウトを聞いていたのだろうパーティメンバーのテレポに相乗りする形で転移した。
ワインポートは、名の通りワインの港、ワインの発信地として発展を遂げた地である。街にはブドウ畑も広がり、その一角には厳重な扉の向こう未だ若いブドウの樹を見ることも出来る。
しかし、私達冒険者はワインを目的としてではなく、また別の目的があってこの地に集まることが多い。
「ウェントブリダさん、こっちですよ」
「ああ、助かる」
ワインポートにテレポした私に手招きしてみせるナイトのミコッテ。
私に背を向け、入り口の方向へと走り出すと青と白の鎧からまろびでているその尻尾がふわふわと揺れていた。
ワインポートを出ると、カストルム・オクシデンスが遠目に見える。更にその傍らにそびえ立つ橙色のクリスタル。
いわゆる偏属性クリスタルに圧倒されて、準備が整うまでそれを見上げてみる。ワインポートの前には一際大きい岩があるのだが、気が付いたら先程のナイトさんも隣に腰かけてクリスタルを見上げていた。
目的地はあのクリスタルの丁度地下。
バハムートを封印していた巨大な拘束具『衛星ダラガブ』。その一部が地に深く突き刺さり、それによってあのようなクリスタルが吹き出したのだとアリゼーは言う。
クリスタルはエーテルの塊。
そしてエーテルは星の資源である。
まるで星の悲鳴か、流血か、涙か。そのようだと、黒魔道士が呟いた。
アリゼーが協力を取り付けたという黒渦団の兵士の案内を得て中へと入れば、黒魔道士の呟きがまるで真であるかのような風景であった。既に今回はこの層の最終ボスを除いた障害は取り除かれているらしい。
お陰でメンバーの案内のもと、ゆっくりとまわりを見て回ることができた。
帝国がかけたのであろう、金属製の黒い橋を渡り、まるで粘性の高い物体が、六角形を基本とする柱を芯として根を張ったかのような独特な雰囲気を持つ空間に降り立つ。ガードであるアラグの防衛機構があったという空洞の向こうには、飛竜の翼のようなものが、同じように偏属性クリスタルに絡み付かれ、覆われていた。
これ迄クリスタルと言えば結晶であった。クリスタルはエーテルの塊なのだから、別におかしい事ではない。けれども、これ程までに曲線に溢れたクリスタルの姿を見たことがあっただろうか。
これだけ見ていると、まるで琥珀のようだと思わされた。
光も差さぬ深い地下は、この琥珀の輝きに照らされていた。
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虚向風音
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