作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。
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「ねえ、ウェント。次ウェントのところに『カミサマ』が来たらさ」
「うん?どうしたんだ突然」
「わたくしのところに来て助けて、って伝えてくれないかな。わたし、もう限界な気がする」
そうやって愚痴を漏らしたのは何時の事だったかしら。
久しぶりのブロンズレイクの温泉に浸かりながらぼんやりと考える。その目と鼻の先には、手製の黒い染色が施されたブリオーと、黒魔道士のアーティファクトと呼ばれる儀礼装備。遂に此処まで来たことを感慨深く感じながら、わたくしはふと思い返していた。
そもそも、わたくしは余り黒魔法が好きな訳でもない。わたくしはフェアリーが好きだし、学者というジョブも愛している。癒し手を続けてきたプライドもあるし、わたくしは恐らく生涯学者であり続けるであろうとは思う。
黒魔法の前身である呪術を学び始めたのも、他の魔術を学ぶことで何か学者の為に出来る事を探しての事であった。
詠唱を、溜めた魔力と組印によって省略する技法……迅速魔。
他者を蘇生するリザレクに限らず、フェアリーの召喚でも長時間の詠唱を余儀なくされる学者にとって、それが魅力でない筈がない。
呪術と巴術は全く違う魔法である。その為、私は本では無く呪術具となる杖を取り、呪術師ギルドの協力のもといちから始める事になった。
ギルドの者達はララフェルが本当に多かった。呪術はウルダハで信仰されているナルザルなる神様とも深い関わりがあるとのことで、恐らく皆地元の者なのだろう。ララフェルはウルダハ出身が多い。
立って話をするとお互い首が痛いので、わたくしは座って話を聞いた。やはり学者としては文献に興味が沸くのだったが、直接見る事は叶わず、ギルドの者から口伝てで聴くのが常であった。
学ぶことに忠実なのは学者の性だとしても、迅速魔を学び終えたら二度と呪術具を手にする事はないと……初めは思っていたものだ。
呪術師は二属性の魔法を主に操るが、同時にそれによって生ずる自らの魔力傾向……アストラルファイアとアンブラルブリザードを巧みに操る事でMPという制限に縛られる事無く魔法を行使する。
考えていた程単純明快とは行かなかった。手製の衣装を纏い、DPSとして色んな地方も旅をしてみた。癒し手が見ないものも其処にはあったように思う。
「私達癒し手の行動は連続しない。ひとつがひとつの行為として完結しているから、止める事に躊躇いがない」
「偏属性の状態は長くは持ちませんからにぅ。せやのに詠唱を止めるなんて時間の損失だけに済まないにゃ」
「そうね……それに、癒し手と違って明確な必要仕事量の条件がないし」
「火力はあるに越した事がにゃいからにぅ」
呪術師ギルドで知り合った真っ黒い肌の猫とそんなような話をした覚えがある。火力には上限値はない。妥協しても、多くの場合分からないけれども、その妥協点を作るにしても自分で決めるしかない。
直面した瞬間に悩むというのは非常に危ない。一方で殆ど詠唱が完了していればちょっとくらい詠唱を切っても魔法は発動するもので、欲も沸く。
純粋に面白いな、と思った。
戦いに楽しみを見出だしている気持ちに嫌悪感を抱きつつも、覗いた世界が奥の深いものであったことに歓喜の念を抱かざるを得なかった。
そんなところに、事件が絡んだ。自分に課された試験に協力してくれたララフェルの少年が妖異にとりつかれたのだ。それから間も無く迅速魔は得られたが、彼を助けたいと思い呪術を続けた。
「勝ったの、ね……」
「そのようですね」
そうして、呪術師ギルドの面たるメンバーを巻き込んで。わたくし達は妖異を倒した。
だから、其処で杖は置くつもりだったのよね。わたくしの目標であった迅速魔は修得が叶い、わたくしの過失で危険な目に会わせた彼も助けた。
呪術師ギルドとしても、わたくしへ課された課題は一通り終わったといった処だった。きりがいい。そうわたくしは考えていた。
そのまま行方をくらますでもなく、呪術師ギルドに挨拶に上がったのはわたくしが律儀なのかもしれない。囮となったギルドマスターの体調も案じていた。
わたくしがそうすることを彼は知っていたのかしら。そうでなければ、わたくしが二度とギルドを訪れなかったら、どうするつもりだったのかしら。
なにはともあれ、杖を置くことを伝えに来たのに。新たに望まれようだなどと、わたくしはちっとも思っていなかったのである。
「うん?どうしたんだ突然」
「わたくしのところに来て助けて、って伝えてくれないかな。わたし、もう限界な気がする」
そうやって愚痴を漏らしたのは何時の事だったかしら。
久しぶりのブロンズレイクの温泉に浸かりながらぼんやりと考える。その目と鼻の先には、手製の黒い染色が施されたブリオーと、黒魔道士のアーティファクトと呼ばれる儀礼装備。遂に此処まで来たことを感慨深く感じながら、わたくしはふと思い返していた。
そもそも、わたくしは余り黒魔法が好きな訳でもない。わたくしはフェアリーが好きだし、学者というジョブも愛している。癒し手を続けてきたプライドもあるし、わたくしは恐らく生涯学者であり続けるであろうとは思う。
黒魔法の前身である呪術を学び始めたのも、他の魔術を学ぶことで何か学者の為に出来る事を探しての事であった。
詠唱を、溜めた魔力と組印によって省略する技法……迅速魔。
他者を蘇生するリザレクに限らず、フェアリーの召喚でも長時間の詠唱を余儀なくされる学者にとって、それが魅力でない筈がない。
呪術と巴術は全く違う魔法である。その為、私は本では無く呪術具となる杖を取り、呪術師ギルドの協力のもといちから始める事になった。
ギルドの者達はララフェルが本当に多かった。呪術はウルダハで信仰されているナルザルなる神様とも深い関わりがあるとのことで、恐らく皆地元の者なのだろう。ララフェルはウルダハ出身が多い。
立って話をするとお互い首が痛いので、わたくしは座って話を聞いた。やはり学者としては文献に興味が沸くのだったが、直接見る事は叶わず、ギルドの者から口伝てで聴くのが常であった。
学ぶことに忠実なのは学者の性だとしても、迅速魔を学び終えたら二度と呪術具を手にする事はないと……初めは思っていたものだ。
呪術師は二属性の魔法を主に操るが、同時にそれによって生ずる自らの魔力傾向……アストラルファイアとアンブラルブリザードを巧みに操る事でMPという制限に縛られる事無く魔法を行使する。
考えていた程単純明快とは行かなかった。手製の衣装を纏い、DPSとして色んな地方も旅をしてみた。癒し手が見ないものも其処にはあったように思う。
「私達癒し手の行動は連続しない。ひとつがひとつの行為として完結しているから、止める事に躊躇いがない」
「偏属性の状態は長くは持ちませんからにぅ。せやのに詠唱を止めるなんて時間の損失だけに済まないにゃ」
「そうね……それに、癒し手と違って明確な必要仕事量の条件がないし」
「火力はあるに越した事がにゃいからにぅ」
呪術師ギルドで知り合った真っ黒い肌の猫とそんなような話をした覚えがある。火力には上限値はない。妥協しても、多くの場合分からないけれども、その妥協点を作るにしても自分で決めるしかない。
直面した瞬間に悩むというのは非常に危ない。一方で殆ど詠唱が完了していればちょっとくらい詠唱を切っても魔法は発動するもので、欲も沸く。
純粋に面白いな、と思った。
戦いに楽しみを見出だしている気持ちに嫌悪感を抱きつつも、覗いた世界が奥の深いものであったことに歓喜の念を抱かざるを得なかった。
そんなところに、事件が絡んだ。自分に課された試験に協力してくれたララフェルの少年が妖異にとりつかれたのだ。それから間も無く迅速魔は得られたが、彼を助けたいと思い呪術を続けた。
「勝ったの、ね……」
「そのようですね」
そうして、呪術師ギルドの面たるメンバーを巻き込んで。わたくし達は妖異を倒した。
だから、其処で杖は置くつもりだったのよね。わたくしの目標であった迅速魔は修得が叶い、わたくしの過失で危険な目に会わせた彼も助けた。
呪術師ギルドとしても、わたくしへ課された課題は一通り終わったといった処だった。きりがいい。そうわたくしは考えていた。
そのまま行方をくらますでもなく、呪術師ギルドに挨拶に上がったのはわたくしが律儀なのかもしれない。囮となったギルドマスターの体調も案じていた。
わたくしがそうすることを彼は知っていたのかしら。そうでなければ、わたくしが二度とギルドを訪れなかったら、どうするつもりだったのかしら。
なにはともあれ、杖を置くことを伝えに来たのに。新たに望まれようだなどと、わたくしはちっとも思っていなかったのである。
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