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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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*此処に出てくるあの子は『死に損ねたらどうする?』のあの子です。



未だ朝早く、その冷たさに微かな霧の広がるリムサ・ロミンサ。しかし市場の朝は早いもので、朝市の誘い声が響く。
冒険者が増えてからというものの、カウルを頭まですっぽりと着こんでいても然程不審がられないというのは、今は都合のよいことであった。


「潮の香り、っていい匂いね。あの頃は見向きもしてなかった」
「後悔してるの?」
「ええ、少し。気付かないままだったのよ?勿体無い事をしていたんだわ」


そんな朝のリムサ・ロミンサ。海に面したこぢんまりとしたカフェテリアで、わたくしはある人物と小さなスイーツタイムを楽しんでいた。
深くカウルを頭まですっぽり被っている、病的に青白い肌のエレゼンの女性。


――誰が思おうか、彼女が動く死者であることを。


シェーダーという種が存在する為、然程青白い肌は問題にはならなかった。蘇生者の腕が酷く良かったのか、肉体的な欠損や腐食は殆どなく、微かな異臭はカウルに織り込まれたハーブで防がれている。紫色の唇には、血色豊かな色の口紅を。


彼女の名はリアヴィヌ。


あれから、結局わたくし達は彼女を殺してやる事が出来なかった。レイヨの精神が相当に磨耗していたことを考え、彼には告げずにわたくし達はこっそり彼女を仮宿へ連れ帰った。

心と身体の主導権を奪わぬように、新たな魔力の契約をし、今の彼女はわたくしが維持している。そうしなくても生きていけないことはない。けれども、生命活動を止めている身体はそれが無ければ緩やかに腐敗していき、滅んでしまう。わたくし達は出来うる限り、彼女を人間に近いままで生かしてやりたいと思ったのだ。


ネクロマンシーは、当然純粋な黒魔の知恵ではない。其処には巴術の技術もあるし、忌むべきヴォイドがもたらした魔法も存在する。

此処にヴォイドが直接絡んで来なかったことを、幸運と思う他ない。突かれるような心の隙は幾らでもあったのだから。


「……アルト?どうしたの、食べないの?」
「え、あ、食べるに決まってるわっ!?」


どうやら、考え込むあまり手が止まっていたらしい。指摘されて慌ててパフェにスプーンを伸ばした。あまりこういう飾ったスイーツを食べないので、この時間は至福の時だ。

目の前の彼女もまた、自分の選んだパフェへとスプーンを伸ばす。消化する機能は生きているのか、なんて実はさっぱり考えていない。問題になるのなら、後でなんとかしようと投げ捨てた。

何より、彼女に彼女が死者であることを意識させるのが気まずかった。


「まるで普通の女の子ね、私達」
「普通の女の子じゃない」
「そうだったわね」


なんて、笑いながら。


リムサのマーケットに降りる。
立ち並ぶ店を二人で見て回る。彼女の手は柔らかなドレスグローブに覆われていて、脆い彼女の指を守っている。

「……あら、これ綺麗」
「お嬢ちゃん御目が高いね!それは霊銀を使ったある指輪のレプリカさ。ささやかながら魔除けの効果もある」

それは肉体的な怪我からに限らない。街の店で売られる程度のものであれば、彼女の身を銀や破邪から守ることも出来るようだった。

「……」

そっと、指輪を置くリアヴィヌが見えた。肉体的には守ることは出来ても、その心まで守ることは出来ないのかもしれない。






日が上りきる前にリムサを出る。
黒魔道士とカウルの女性、という異色のペアはやっぱりどうしたって目立つもの。私達だって、追及は怖い。

「今日は有難うね、楽しかったわ」
「そう、思って貰えてたなら嬉しいんだけど……」


彼女の幸せって、何だろう。
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