作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。
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Articolate=Rosatraum
アルティコレート=ローザトラウム。エレゼンのフォレスター。女性、年齢は約21歳。
金髪金瞳(茶髪は染髪の為、地毛は金である)、短く大きな耳を持つ。
背は種族においては平均的、胸は控え目であるようだ。
何らかからの逃走を目的としてリムサ行きの船に密航してやってきた。先立つお金がそう無いこともあり、そのままリムサで密やかに暮らしていたが、好奇心から調理師ギルドに潜り込んでいたのをギルドマスターリングサスに見付かり、興味があるならやってみろと調理師の道を歩み始めた。
巴術はそんな彼女が護身術として独学で学んでいたものであるが、それが彼女を学者としても大成させるのはそれからかなり後の話なのである。
その経緯もあり、母国リムサでは彼女は今も学者としてより一流の調理師として知られている。
トマト煮やスープ類が好きで、ビスマルクには彼女がお気に入りのメニューが一品だけ隠しメニューとして存在し、彼女が調理師ギルドにいるときはこっそり作ってくれるとも言われている。一方で、指名の上で料理を作ることはまずない。
気まぐれでマイペースな彼女は、客をとってしまえば自分が拘束されると不安がっているのだろう。実際彼女の名声から、指名できるならば指名したいと考えている客は少なくないだろう事が考えられる。
好奇心旺盛で、知識欲高い女性であるが、本質として非常にマイペースでのんびりとした女性でもある。したいときに好きなだけのめり込む彼女は、『カミサマ』の影響下にないときですら気紛れで夜通し作業や製作を試みては、翌日寝過ごすなんてこともある。
御嬢様ぶった口調を好んで用い、女性らしい事に人一倍敏感である。特にアクセサリーや服選びが好きで、自分でも作ってみたいとの思いからなんだかんだで裁縫も学んでいる。
そんな彼女であるが、虚勢を張ることが常であるがゆえに甘えたりするのが不得手で非常に嘘つきでもある。意地悪や悪戯を親しい相手にすることもあるが、恐らく彼女はその時甘えたいのを照れ隠しするために形を変えて行っているのだろう。
彼女はヴォイドが嫌いであるが、一方で旅の友は一匹のアーリマンであることが多い。恐らく、このアーリマンとは特別な縁があるのだろう。彼の羽根をいとおしそうに拭いている姿を見た、という者もいる。
アルティコレート=ローザトラウム。エレゼンのフォレスター。女性、年齢は約21歳。
金髪金瞳(茶髪は染髪の為、地毛は金である)、短く大きな耳を持つ。
背は種族においては平均的、胸は控え目であるようだ。
何らかからの逃走を目的としてリムサ行きの船に密航してやってきた。先立つお金がそう無いこともあり、そのままリムサで密やかに暮らしていたが、好奇心から調理師ギルドに潜り込んでいたのをギルドマスターリングサスに見付かり、興味があるならやってみろと調理師の道を歩み始めた。
巴術はそんな彼女が護身術として独学で学んでいたものであるが、それが彼女を学者としても大成させるのはそれからかなり後の話なのである。
その経緯もあり、母国リムサでは彼女は今も学者としてより一流の調理師として知られている。
トマト煮やスープ類が好きで、ビスマルクには彼女がお気に入りのメニューが一品だけ隠しメニューとして存在し、彼女が調理師ギルドにいるときはこっそり作ってくれるとも言われている。一方で、指名の上で料理を作ることはまずない。
気まぐれでマイペースな彼女は、客をとってしまえば自分が拘束されると不安がっているのだろう。実際彼女の名声から、指名できるならば指名したいと考えている客は少なくないだろう事が考えられる。
好奇心旺盛で、知識欲高い女性であるが、本質として非常にマイペースでのんびりとした女性でもある。したいときに好きなだけのめり込む彼女は、『カミサマ』の影響下にないときですら気紛れで夜通し作業や製作を試みては、翌日寝過ごすなんてこともある。
御嬢様ぶった口調を好んで用い、女性らしい事に人一倍敏感である。特にアクセサリーや服選びが好きで、自分でも作ってみたいとの思いからなんだかんだで裁縫も学んでいる。
そんな彼女であるが、虚勢を張ることが常であるがゆえに甘えたりするのが不得手で非常に嘘つきでもある。意地悪や悪戯を親しい相手にすることもあるが、恐らく彼女はその時甘えたいのを照れ隠しするために形を変えて行っているのだろう。
彼女はヴォイドが嫌いであるが、一方で旅の友は一匹のアーリマンであることが多い。恐らく、このアーリマンとは特別な縁があるのだろう。彼の羽根をいとおしそうに拭いている姿を見た、という者もいる。
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ラノシアの夜は、風がとても冷えるの。熱を失い冷えた海を渡る、冷たい風がそのまま流れ込んでくるから。ただ其れが初夏の今にはとても心地よくて、よくこの仮宿の窓は開け放たれている。
夕闇の気配と、そんな夜のラノシアの風で目が覚めた。共に寝入ったミコッテは、未だ腕の中ですやすやと眠りについている。起こさないよう、そっと身を起こす。はらりと落ちた毛布の存在に、初めて自分達以外にこの家に帰宅している者がいることに気が付いた。
視線を奥に向ければ、確かに家族同然に暮らしている者達のうち、この上の階に寝泊まりしている二人の姿が見えた。他人の気配があっては眠れないルガディンの女性が、私の連れてきたミコッテを意識する事なく深い眠りについているようであるのは、少しばかり嬉しい事。
彼女にとって、それはこのミコッテを懐に入れても構わないと感じているという事で、自分が好きな相手が家族からも信頼されていると分かるのは嬉しいと思ったの。
エレゼンの方が嫉妬ぎみに悪戯をしてくることがちょっと怖いけれど、今から私達に出来る自衛は何もない。そっと今は苦笑いするに留めた。
ふわふわとしたミコッテの彼女の髪に触れる。緩やかなウェーブがかかりながらも、手櫛が引っ掛からないのは彼女がきちんと手入れをしている賜物なのでしょう。やがてくすぐったそうに身を揺らし、目を覚ます彼女に私は優しく微笑み掛けた。
後ろを示して、口許に人差し指を添える。驚きと、見られた恥ずかしさか顔を赤らめながらも頷く彼女がいとおしい。そっと二人で毛布の下から抜け出した。顔を見合せ二人で笑う。この暖かな時間にただただ感謝して。
談笑しながら降りる階段は、なんだかとっても短い気がした。夜はまだまだ此れからなのだけれども、彼女にも私にも家族はいるから、たまにの勢揃いの時くらいはと思うのです。彼女の父君を心配させたくもありません。
開かんとした仮宿の扉が独りでに開き、現れた白金の髪のエレゼンのナイトと、黒髪のララフェルの白魔道士に私は笑顔を、彼女は礼を返し、私は二人を迎え入れ、私達は彼女を見送るのでした。
そろそろ我が家の調理師を起こしましょうか、遅い夕食に致しましょう。
夕闇の気配と、そんな夜のラノシアの風で目が覚めた。共に寝入ったミコッテは、未だ腕の中ですやすやと眠りについている。起こさないよう、そっと身を起こす。はらりと落ちた毛布の存在に、初めて自分達以外にこの家に帰宅している者がいることに気が付いた。
視線を奥に向ければ、確かに家族同然に暮らしている者達のうち、この上の階に寝泊まりしている二人の姿が見えた。他人の気配があっては眠れないルガディンの女性が、私の連れてきたミコッテを意識する事なく深い眠りについているようであるのは、少しばかり嬉しい事。
彼女にとって、それはこのミコッテを懐に入れても構わないと感じているという事で、自分が好きな相手が家族からも信頼されていると分かるのは嬉しいと思ったの。
エレゼンの方が嫉妬ぎみに悪戯をしてくることがちょっと怖いけれど、今から私達に出来る自衛は何もない。そっと今は苦笑いするに留めた。
ふわふわとしたミコッテの彼女の髪に触れる。緩やかなウェーブがかかりながらも、手櫛が引っ掛からないのは彼女がきちんと手入れをしている賜物なのでしょう。やがてくすぐったそうに身を揺らし、目を覚ます彼女に私は優しく微笑み掛けた。
後ろを示して、口許に人差し指を添える。驚きと、見られた恥ずかしさか顔を赤らめながらも頷く彼女がいとおしい。そっと二人で毛布の下から抜け出した。顔を見合せ二人で笑う。この暖かな時間にただただ感謝して。
談笑しながら降りる階段は、なんだかとっても短い気がした。夜はまだまだ此れからなのだけれども、彼女にも私にも家族はいるから、たまにの勢揃いの時くらいはと思うのです。彼女の父君を心配させたくもありません。
開かんとした仮宿の扉が独りでに開き、現れた白金の髪のエレゼンのナイトと、黒髪のララフェルの白魔道士に私は笑顔を、彼女は礼を返し、私は二人を迎え入れ、私達は彼女を見送るのでした。
そろそろ我が家の調理師を起こしましょうか、遅い夕食に致しましょう。
私達はReCというフリーカンパニーに所属している。
リーダーはアンフェルツィート。
こじんまりした、身内のフリーカンパニーだ。アルティコレート、ユイ、私、最近知り合ったオブリージェ、私を追っ掛けてきたアガトゲイム。可愛いナイトの後輩である、イスラ。
何時かはハウジングを持とうと言う話ではあるのだが、気が付けば装備に使っていて中々溜まることはない。
そんな私達が、暫く羽を休める場として内密に借りたのが……この仮宿と私達が呼ぶ建物である。
仮宿の一階は憩いのスペース。キッチンがあるし、囲えるテーブルがあるし、壁にはソファが並んでいて騒ぐにはもってこい。
けれどわたくしはいまそんな目的で来たわけではなく、入ってすぐ左手の階段をのぼっていく。
二階はとても静かだ。
奥にある大きな窓から、塩気の僅かに残るラノシアの風が薫る。窓は普段開けられてはいない筈なのだけれども……視線を少し下げると、其処にはソファで抱きあうように眠る二つの影があるのが見えた。
見慣れた褐色肌に銀髪のエレゼンと、もう一人は黒髪のふんわりとしたミコッテだ。そう言えばこのエレゼンの女性は、丸で猫のような癖を持っていたのだったかしら、と僅かに背を丸めてミコッテを抱く彼女を見て笑みが浮かんだ。
ちょっかいを出したがるフェアリーを制し、奥へと進む。奥一面を専有しているベットの下の小さな引き出しを開くと、其処に毛布がしまわれている。
其れを取り出すと、寝入っている二人にそっとかけてやる。フェアリーが面白がって毛布の上に寝転がるのを微笑ましく見守りながらわたくしは振り返る。
ソファの対面。
背の高い椅子に、格式張った机。
黒い台に挿された羽ペンの隣に、わたくしの愛本を開く。嘗ては最低限、その本の力を発揮する為の魔紋のみが刻まれていたヒーラーグリモアには、今や血も汗も努力も苦悩も、わたくしの歩んだ戦いの日々こそ刻まれた、わたくしだけの本へと変わっている。
椅子に深く腰掛け、わたくしは今日の調律を開始した。
よりこの本と、そしてフェアリーと、深く繋がる為に……。
人や獣の気配が動くと、目が覚めるし眠ることも出来ない。それは、私の生き抜く為の適応と言えばそうであるし、悩みでもある。
個室の宿屋は未だ休める事も多いが、余りに人が頻繁に動くから寝付けず、クァールやチョコボを番にして敢えて野外で寝ることも一度や二度に留まらない。
野外は野外で動物や魔物がいるため、確り休めるという訳でもなく……必然ながら普段の私の眠りは非常に浅い。
私にとって、仮宿は安全地帯である。他者の気配に過敏な私がそれを気にすることなく熟睡できる数少ない場所だ。それは、この仮宿に入る人間が、私と、私達と深い関係にある者しかいないというのがある。
気配を感じなくなった訳ではないが、気にすることなく眠れるような者は幾人かいるのだ。
そんな深い眠りが欲しいときと言えば、やはり『カミサマ』から解放されてすぐなどか。今日も誘われるままに深淵を覗き込んできた。船、と形容するべきなのであろうダラガブの構造物の中……根を張ったかのようにその場を離れる事のない門番『アバター』。
三期目の正直、といった処だった。残念ながら今回の戦友は何時も決まって挑む者達ではなかったけれども。ようやっと打ち倒す事が叶い、『カミサマ』から解放されて急ぎ足で此処に至る。
朝も夜も、忘れて戦う。それはとても楽しいけれども、事が終わるとどっと疲れがやってくるものだ。心臓の拍動が煩い、体が鉛とまではいかなくとも重い。これ迄は見兼ねた革ギルドマスターが、人払いをした一室で次に目が覚める迄こんこんと寝かせてくれることもあったが、彼女の手を煩わせる事もない。
そんな事を考えながら二階の扉を開くと、あまり珍しくもない光景が広がっていた。
ソファで銀髪のエレゼンの女性が黒髪のミコッテと寝ている。毛布が掛けられているのは、第三者がかけたものだろう。
其処から反対側、書斎にあっても可笑しくないような作業机に、突っ伏す栗色の髪のエレゼンがいるのが見えた。意識が微睡みの最中に落ちていても尚、コントロールと魔力供給が切れていないのだろうか、傍らにフェアリーが心配そうに飛び回っているのが見える。
あれでは満足な睡眠にはなるまい。
彼女も多少は周囲の気配が読める方ではあるのであるが、気配を消すことにも慣れている私では気付きようがない。近寄ってくる私に気付いたフェアリーに、口に人差し指を持っていくサインを返すと、彼女は理解したのか邪魔にならない処にそっと腰掛け飛ぶのを止めた。
そっと、椅子を少しだけ引く。突っ伏す彼女が机という支えを失わない程度に。
空間のあいた、椅子の脚と彼女の足の間に片腕を通す。後は引き寄せるように彼女の胴を抱え込んで抱き上げた。
彼女を抱いたまま、奥の寝台に上がる。ゆっくりと寝台の一角に彼女を降ろす。この時期ならば、無理に布団をかける必要もないだろう。
私はその彼女の隣に寝転がり……程なく深い眠りに誘われていくのであった。
リーダーはアンフェルツィート。
こじんまりした、身内のフリーカンパニーだ。アルティコレート、ユイ、私、最近知り合ったオブリージェ、私を追っ掛けてきたアガトゲイム。可愛いナイトの後輩である、イスラ。
何時かはハウジングを持とうと言う話ではあるのだが、気が付けば装備に使っていて中々溜まることはない。
そんな私達が、暫く羽を休める場として内密に借りたのが……この仮宿と私達が呼ぶ建物である。
仮宿の一階は憩いのスペース。キッチンがあるし、囲えるテーブルがあるし、壁にはソファが並んでいて騒ぐにはもってこい。
けれどわたくしはいまそんな目的で来たわけではなく、入ってすぐ左手の階段をのぼっていく。
二階はとても静かだ。
奥にある大きな窓から、塩気の僅かに残るラノシアの風が薫る。窓は普段開けられてはいない筈なのだけれども……視線を少し下げると、其処にはソファで抱きあうように眠る二つの影があるのが見えた。
見慣れた褐色肌に銀髪のエレゼンと、もう一人は黒髪のふんわりとしたミコッテだ。そう言えばこのエレゼンの女性は、丸で猫のような癖を持っていたのだったかしら、と僅かに背を丸めてミコッテを抱く彼女を見て笑みが浮かんだ。
ちょっかいを出したがるフェアリーを制し、奥へと進む。奥一面を専有しているベットの下の小さな引き出しを開くと、其処に毛布がしまわれている。
其れを取り出すと、寝入っている二人にそっとかけてやる。フェアリーが面白がって毛布の上に寝転がるのを微笑ましく見守りながらわたくしは振り返る。
ソファの対面。
背の高い椅子に、格式張った机。
黒い台に挿された羽ペンの隣に、わたくしの愛本を開く。嘗ては最低限、その本の力を発揮する為の魔紋のみが刻まれていたヒーラーグリモアには、今や血も汗も努力も苦悩も、わたくしの歩んだ戦いの日々こそ刻まれた、わたくしだけの本へと変わっている。
椅子に深く腰掛け、わたくしは今日の調律を開始した。
よりこの本と、そしてフェアリーと、深く繋がる為に……。
人や獣の気配が動くと、目が覚めるし眠ることも出来ない。それは、私の生き抜く為の適応と言えばそうであるし、悩みでもある。
個室の宿屋は未だ休める事も多いが、余りに人が頻繁に動くから寝付けず、クァールやチョコボを番にして敢えて野外で寝ることも一度や二度に留まらない。
野外は野外で動物や魔物がいるため、確り休めるという訳でもなく……必然ながら普段の私の眠りは非常に浅い。
私にとって、仮宿は安全地帯である。他者の気配に過敏な私がそれを気にすることなく熟睡できる数少ない場所だ。それは、この仮宿に入る人間が、私と、私達と深い関係にある者しかいないというのがある。
気配を感じなくなった訳ではないが、気にすることなく眠れるような者は幾人かいるのだ。
そんな深い眠りが欲しいときと言えば、やはり『カミサマ』から解放されてすぐなどか。今日も誘われるままに深淵を覗き込んできた。船、と形容するべきなのであろうダラガブの構造物の中……根を張ったかのようにその場を離れる事のない門番『アバター』。
三期目の正直、といった処だった。残念ながら今回の戦友は何時も決まって挑む者達ではなかったけれども。ようやっと打ち倒す事が叶い、『カミサマ』から解放されて急ぎ足で此処に至る。
朝も夜も、忘れて戦う。それはとても楽しいけれども、事が終わるとどっと疲れがやってくるものだ。心臓の拍動が煩い、体が鉛とまではいかなくとも重い。これ迄は見兼ねた革ギルドマスターが、人払いをした一室で次に目が覚める迄こんこんと寝かせてくれることもあったが、彼女の手を煩わせる事もない。
そんな事を考えながら二階の扉を開くと、あまり珍しくもない光景が広がっていた。
ソファで銀髪のエレゼンの女性が黒髪のミコッテと寝ている。毛布が掛けられているのは、第三者がかけたものだろう。
其処から反対側、書斎にあっても可笑しくないような作業机に、突っ伏す栗色の髪のエレゼンがいるのが見えた。意識が微睡みの最中に落ちていても尚、コントロールと魔力供給が切れていないのだろうか、傍らにフェアリーが心配そうに飛び回っているのが見える。
あれでは満足な睡眠にはなるまい。
彼女も多少は周囲の気配が読める方ではあるのであるが、気配を消すことにも慣れている私では気付きようがない。近寄ってくる私に気付いたフェアリーに、口に人差し指を持っていくサインを返すと、彼女は理解したのか邪魔にならない処にそっと腰掛け飛ぶのを止めた。
そっと、椅子を少しだけ引く。突っ伏す彼女が机という支えを失わない程度に。
空間のあいた、椅子の脚と彼女の足の間に片腕を通す。後は引き寄せるように彼女の胴を抱え込んで抱き上げた。
彼女を抱いたまま、奥の寝台に上がる。ゆっくりと寝台の一角に彼女を降ろす。この時期ならば、無理に布団をかける必要もないだろう。
私はその彼女の隣に寝転がり……程なく深い眠りに誘われていくのであった。
アルティコレート=ローザトラウム。
黒渦に所属する、エレゼンの学者である彼女は……しかして、未だ多くのリムサの人々にとって、別の形で有名であった。
あるビスマルクの深夜。
仕込みに忙しいコック達が駆けずり回る傍ら、その調理場の端を借りて一人のんびりと鍋とにらめっこをしているエレゼンがいた。
明らかに仕込みでは無さそうなそれを咎める者は誰もいない。というのも彼女はビスマルクの従業員ではなく、客のいないこの時間を狙ってこのビスマルクに併設された調理師ギルドに顔を出す珍客であったのだ。
「よ、調子はどうだ」
「大分安定はしてきたわ。それでも、数が要るから時間は掛かりそうだけれども……」
ギルド員であり、店員であるヒューラン族の男性イングハムはそんな彼女に声をかけた。鍋から視線を外さず彼女は声に応える。イングハムは目的に集中する彼女から、鍋へと視線を移す。
果肉が未だ残る、鮮やかな赤い海。つんとした葡萄由来の酢の臭いと、僅かなシナモンの香り。木べらでゆっくりと焦げ付く事のないように煮詰められているのは処理済みのトマトピューレといった処か。ポモドーロソースのような、シンプルなトマトソースが現在主流であるエオルゼアに、彼女が今挑んでいるような味付きのトマトソースは馴染みが薄い。
トマトケチャップと呼ばれるトマトを利用した万能調味料。しかし、そのレシピは万人が知るものではない。
「50皿分だっけか?そんなに大量に要求してタラン爺さんとやらは何が望みなんだろうな」
「腕を試したいんでしょ?渡した料理をそのまま捨てられたら、ちょっとめげるけれども」
秘伝書、と呼ばれるレシピ集がある。その秘伝書と、もうひとつ、質の良い主道具を持ち込んだ流れの職人がいる。ただ職人は実力に煩い。秘伝書を得るにも主道具を得るにも、質の良い作品を求めてきた。
「まあ、渡した後どうなるかなんて気にしねえ方がお前の場合身のためかもな」
「そうね」
「処で、こっちはなんだ?」
自分の仕事は果たして終わっているのだろうか、イングハムは鍋しきの上に置かれている小さめの鍋に目をやった。中身は、似たような赤い海が広がっている。しかし色は僅かに濁り、鮮やかさを損なっている。
「最初に試した試作品。ちょっと要求された品質には届かないかなあって」
アルトは、鍋の向こうに置いたままの、ラプトルのモモ肉を見やって意地悪く笑った。そして、今忙しく動き回って腹も空いているだろう店員達と、イングハムに聞こえるよう、呟いた。
「ラプトルのトマト煮とか、後で作っちゃおうかなって」
「聞かなきゃ良かった!!腹がすくじゃねえかよ!」
「そう思ったらお仕事に戻ったらどう?」
厨房に暫し笑い声が響くのだった。
一通り仕込みが終わったビスマルクの厨房で、彼女は壁に背を預け一時の休息をとっていた。
ビスマルクの店員達はそれぞれの寝床についたのだろう、其処にいるのは彼女くらいだ。彼女のやりたかったことも一段落済んでおり、大鍋は片付けられ何本かの大きな瓶にトマトケチャップが詰められていた。
「お、アルティコレート。帰ってなかったのか」
「ん……ぅ、リングサス?」
「おう、ちぃと仕入れの方で一悶着あってな。仕込みの方は……全部終わってんな、よしよし」
厨房に入ってきたのは、大柄なルガディンの男性であった。名前をリングサスといい、この調理師ギルドのマスターである。今日は外部で催しがあり店をあけていた店長は、厨房の片隅で眠っていたアルトに声をかけた。入り口から調理場へと降りながら、仕込みの進行度を確かめる。
「提督からお前さんに手紙だ、仕事みたいだぞ」
「……なに、わたくし指名?」
そうしてアルトの前までやってきて、手渡したのは確かにメルウィブ提督の封書であった。有り難がる事もなくその封を開いた彼女は、中身を読んで眠たい目を擦りながら立ち上がった。
「提督も意地悪ね。相手が相手じゃなきゃこのくそ忙しい時期断ってやりますのに」
「ほう?何が書いてあったんだ?」
彼女は答えない。代わりに、書面を見せて苦笑いした。
リングサスもまた、苦笑いを浮かべるのに然程時間はかからない。
黒渦に所属する、エレゼンの学者である彼女は……しかして、未だ多くのリムサの人々にとって、別の形で有名であった。
あるビスマルクの深夜。
仕込みに忙しいコック達が駆けずり回る傍ら、その調理場の端を借りて一人のんびりと鍋とにらめっこをしているエレゼンがいた。
明らかに仕込みでは無さそうなそれを咎める者は誰もいない。というのも彼女はビスマルクの従業員ではなく、客のいないこの時間を狙ってこのビスマルクに併設された調理師ギルドに顔を出す珍客であったのだ。
「よ、調子はどうだ」
「大分安定はしてきたわ。それでも、数が要るから時間は掛かりそうだけれども……」
ギルド員であり、店員であるヒューラン族の男性イングハムはそんな彼女に声をかけた。鍋から視線を外さず彼女は声に応える。イングハムは目的に集中する彼女から、鍋へと視線を移す。
果肉が未だ残る、鮮やかな赤い海。つんとした葡萄由来の酢の臭いと、僅かなシナモンの香り。木べらでゆっくりと焦げ付く事のないように煮詰められているのは処理済みのトマトピューレといった処か。ポモドーロソースのような、シンプルなトマトソースが現在主流であるエオルゼアに、彼女が今挑んでいるような味付きのトマトソースは馴染みが薄い。
トマトケチャップと呼ばれるトマトを利用した万能調味料。しかし、そのレシピは万人が知るものではない。
「50皿分だっけか?そんなに大量に要求してタラン爺さんとやらは何が望みなんだろうな」
「腕を試したいんでしょ?渡した料理をそのまま捨てられたら、ちょっとめげるけれども」
秘伝書、と呼ばれるレシピ集がある。その秘伝書と、もうひとつ、質の良い主道具を持ち込んだ流れの職人がいる。ただ職人は実力に煩い。秘伝書を得るにも主道具を得るにも、質の良い作品を求めてきた。
「まあ、渡した後どうなるかなんて気にしねえ方がお前の場合身のためかもな」
「そうね」
「処で、こっちはなんだ?」
自分の仕事は果たして終わっているのだろうか、イングハムは鍋しきの上に置かれている小さめの鍋に目をやった。中身は、似たような赤い海が広がっている。しかし色は僅かに濁り、鮮やかさを損なっている。
「最初に試した試作品。ちょっと要求された品質には届かないかなあって」
アルトは、鍋の向こうに置いたままの、ラプトルのモモ肉を見やって意地悪く笑った。そして、今忙しく動き回って腹も空いているだろう店員達と、イングハムに聞こえるよう、呟いた。
「ラプトルのトマト煮とか、後で作っちゃおうかなって」
「聞かなきゃ良かった!!腹がすくじゃねえかよ!」
「そう思ったらお仕事に戻ったらどう?」
厨房に暫し笑い声が響くのだった。
一通り仕込みが終わったビスマルクの厨房で、彼女は壁に背を預け一時の休息をとっていた。
ビスマルクの店員達はそれぞれの寝床についたのだろう、其処にいるのは彼女くらいだ。彼女のやりたかったことも一段落済んでおり、大鍋は片付けられ何本かの大きな瓶にトマトケチャップが詰められていた。
「お、アルティコレート。帰ってなかったのか」
「ん……ぅ、リングサス?」
「おう、ちぃと仕入れの方で一悶着あってな。仕込みの方は……全部終わってんな、よしよし」
厨房に入ってきたのは、大柄なルガディンの男性であった。名前をリングサスといい、この調理師ギルドのマスターである。今日は外部で催しがあり店をあけていた店長は、厨房の片隅で眠っていたアルトに声をかけた。入り口から調理場へと降りながら、仕込みの進行度を確かめる。
「提督からお前さんに手紙だ、仕事みたいだぞ」
「……なに、わたくし指名?」
そうしてアルトの前までやってきて、手渡したのは確かにメルウィブ提督の封書であった。有り難がる事もなくその封を開いた彼女は、中身を読んで眠たい目を擦りながら立ち上がった。
「提督も意地悪ね。相手が相手じゃなきゃこのくそ忙しい時期断ってやりますのに」
「ほう?何が書いてあったんだ?」
彼女は答えない。代わりに、書面を見せて苦笑いした。
リングサスもまた、苦笑いを浮かべるのに然程時間はかからない。
「なあ、私には似合っていないのではないか?服に着られてはいないだろうか」
「そんなことはないよ、とてもよく似合っている」
口では否定を述べながら、自分でさえ似合っていないとはとてもじゃないが思いづらい、思いがけない私自身の姿に目眩がした。
最近新しく関わるようになったエレゼンの女性、アンフェルツィートが事あるごとに「自分が自分でないようだ」と訴えていた時期があった。
今の私の気持ちは、恐らくそれに近い。
助けて貰えないどころか、笑顔で見送られて奥へと引っ込まされた私は、ロアユ闘将の手によって着替えさせられる事となった。男物のスーツを脱がされ、さらしも外される。自由になった胸にブラジャーを付けさせられ、その上にドレスを着た。
深い青の生地が、波のような模様を作っている。織り込まれた銀のラメの輝きは、夜の海に弾ける小さな波が生み出す光のよう。
胸部から上がないビスチェと呼ばれるデザインは、鍛えられた身体の確かな線を残す鎖骨を色っぽく強調しているかのようだ。
一方で筋肉の線が出て無骨に写りがちな両の腕は、肘よりやや上まであるなだらかな線を持つ長いドレスグローブに覆われ、冒険者の腕には思いづらい女性の腕が目に映る。
スカートはぎりぎり靴が見えるか見えないかといった丈のAラインスカートであった。腕同様、ルガディン族の逞しい四肢を綺麗に隠しながら、なだらかに豊かに広がるスカートは、上半身を相対的に細身に見せている気がしてくる。
私の為に誂えられたといっていい、一品物のドレス。慣れないハイヒールに、歩くのも不安になりただ視線だけをさ迷わせる。
「私も似合っておると思うぞ」
「お褒めに預かり、光栄に御座います。しかし、ラウバーン様、よもや土産とは……」
先程の呟きに、ナナモ様が反応した事に驚くがこの服では跪く事が出来ないではないか!狼狽える私に満足そうな笑顔を返すナナモ様と、力強く頷くラウバーンに、私は恥ずかしさからよろけそうになり闘将に支えられる羽目になったのであった。
「ウルダハの宝であるお前への礼もそうなのだが、こういう社会に慣れていないであろうお前に、事前に触れておいて貰った方が良さそうだろうと考えたことがあってね」
結局、ハイヒールで長時間立つのは不慣れな私には酷だろうと用意された椅子に座りジェンリンスの話す種明かしと本来の目的に耳を傾ける。
私がドレスを持っていないであろう事はかなり可能性の高いこととして憂慮しており、その件を招待にあたって心配事として伝えた処、ロアユ闘将とナナモ様が乗り気になってこのドレスを手配したのだという。
しかし、慣れるべき事柄とは何だろうか。考え込む私に、アーサーは屈み込んで手を差し伸べた。ふと意識をやり、彼を見上げるのだが、よくよく見れば彼もまた正装といえるスーツ姿だ。
差し伸べられた手を取ると、殆どアーサーに引き寄せられるかのようにあっさり椅子から立ち上がる事が出来た。この靴だから踏ん張り難いし、立ち上がるのは楽ではないと思っていたのに。
「ウェント、聞くけれど……社交ダンスを女性の側で踊った経験はあるかい?」
「社交ダンス!?」
反対側の手に、アーサーの反対側の手が重ねられる。余りにも近い異性の姿にどきっとさせられるが、それどころではない。
「大丈夫、其れならばゆっくり慣れていこうか。エスコートするよ、ウェント」
余りの恥ずかしさに、なんだか気が遠くなる気がした。慌てたアーサーの心配の声が響く。少し考えれば、ただちょっと女性扱いを受けただけであったのだが……
社交界は大変なものであると、思わされるのであった。
============
本来のプロットより早いところでストーリーが切れてる悲しみ。
読了感謝。
「そんなことはないよ、とてもよく似合っている」
口では否定を述べながら、自分でさえ似合っていないとはとてもじゃないが思いづらい、思いがけない私自身の姿に目眩がした。
最近新しく関わるようになったエレゼンの女性、アンフェルツィートが事あるごとに「自分が自分でないようだ」と訴えていた時期があった。
今の私の気持ちは、恐らくそれに近い。
助けて貰えないどころか、笑顔で見送られて奥へと引っ込まされた私は、ロアユ闘将の手によって着替えさせられる事となった。男物のスーツを脱がされ、さらしも外される。自由になった胸にブラジャーを付けさせられ、その上にドレスを着た。
深い青の生地が、波のような模様を作っている。織り込まれた銀のラメの輝きは、夜の海に弾ける小さな波が生み出す光のよう。
胸部から上がないビスチェと呼ばれるデザインは、鍛えられた身体の確かな線を残す鎖骨を色っぽく強調しているかのようだ。
一方で筋肉の線が出て無骨に写りがちな両の腕は、肘よりやや上まであるなだらかな線を持つ長いドレスグローブに覆われ、冒険者の腕には思いづらい女性の腕が目に映る。
スカートはぎりぎり靴が見えるか見えないかといった丈のAラインスカートであった。腕同様、ルガディン族の逞しい四肢を綺麗に隠しながら、なだらかに豊かに広がるスカートは、上半身を相対的に細身に見せている気がしてくる。
私の為に誂えられたといっていい、一品物のドレス。慣れないハイヒールに、歩くのも不安になりただ視線だけをさ迷わせる。
「私も似合っておると思うぞ」
「お褒めに預かり、光栄に御座います。しかし、ラウバーン様、よもや土産とは……」
先程の呟きに、ナナモ様が反応した事に驚くがこの服では跪く事が出来ないではないか!狼狽える私に満足そうな笑顔を返すナナモ様と、力強く頷くラウバーンに、私は恥ずかしさからよろけそうになり闘将に支えられる羽目になったのであった。
「ウルダハの宝であるお前への礼もそうなのだが、こういう社会に慣れていないであろうお前に、事前に触れておいて貰った方が良さそうだろうと考えたことがあってね」
結局、ハイヒールで長時間立つのは不慣れな私には酷だろうと用意された椅子に座りジェンリンスの話す種明かしと本来の目的に耳を傾ける。
私がドレスを持っていないであろう事はかなり可能性の高いこととして憂慮しており、その件を招待にあたって心配事として伝えた処、ロアユ闘将とナナモ様が乗り気になってこのドレスを手配したのだという。
しかし、慣れるべき事柄とは何だろうか。考え込む私に、アーサーは屈み込んで手を差し伸べた。ふと意識をやり、彼を見上げるのだが、よくよく見れば彼もまた正装といえるスーツ姿だ。
差し伸べられた手を取ると、殆どアーサーに引き寄せられるかのようにあっさり椅子から立ち上がる事が出来た。この靴だから踏ん張り難いし、立ち上がるのは楽ではないと思っていたのに。
「ウェント、聞くけれど……社交ダンスを女性の側で踊った経験はあるかい?」
「社交ダンス!?」
反対側の手に、アーサーの反対側の手が重ねられる。余りにも近い異性の姿にどきっとさせられるが、それどころではない。
「大丈夫、其れならばゆっくり慣れていこうか。エスコートするよ、ウェント」
余りの恥ずかしさに、なんだか気が遠くなる気がした。慌てたアーサーの心配の声が響く。少し考えれば、ただちょっと女性扱いを受けただけであったのだが……
社交界は大変なものであると、思わされるのであった。
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本来のプロットより早いところでストーリーが切れてる悲しみ。
読了感謝。
プロフィール
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虚向風音
性別:
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P R