作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。
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アルティコレート=ローザトラウム。
黒渦に所属する、エレゼンの学者である彼女は……しかして、未だ多くのリムサの人々にとって、別の形で有名であった。
あるビスマルクの深夜。
仕込みに忙しいコック達が駆けずり回る傍ら、その調理場の端を借りて一人のんびりと鍋とにらめっこをしているエレゼンがいた。
明らかに仕込みでは無さそうなそれを咎める者は誰もいない。というのも彼女はビスマルクの従業員ではなく、客のいないこの時間を狙ってこのビスマルクに併設された調理師ギルドに顔を出す珍客であったのだ。
「よ、調子はどうだ」
「大分安定はしてきたわ。それでも、数が要るから時間は掛かりそうだけれども……」
ギルド員であり、店員であるヒューラン族の男性イングハムはそんな彼女に声をかけた。鍋から視線を外さず彼女は声に応える。イングハムは目的に集中する彼女から、鍋へと視線を移す。
果肉が未だ残る、鮮やかな赤い海。つんとした葡萄由来の酢の臭いと、僅かなシナモンの香り。木べらでゆっくりと焦げ付く事のないように煮詰められているのは処理済みのトマトピューレといった処か。ポモドーロソースのような、シンプルなトマトソースが現在主流であるエオルゼアに、彼女が今挑んでいるような味付きのトマトソースは馴染みが薄い。
トマトケチャップと呼ばれるトマトを利用した万能調味料。しかし、そのレシピは万人が知るものではない。
「50皿分だっけか?そんなに大量に要求してタラン爺さんとやらは何が望みなんだろうな」
「腕を試したいんでしょ?渡した料理をそのまま捨てられたら、ちょっとめげるけれども」
秘伝書、と呼ばれるレシピ集がある。その秘伝書と、もうひとつ、質の良い主道具を持ち込んだ流れの職人がいる。ただ職人は実力に煩い。秘伝書を得るにも主道具を得るにも、質の良い作品を求めてきた。
「まあ、渡した後どうなるかなんて気にしねえ方がお前の場合身のためかもな」
「そうね」
「処で、こっちはなんだ?」
自分の仕事は果たして終わっているのだろうか、イングハムは鍋しきの上に置かれている小さめの鍋に目をやった。中身は、似たような赤い海が広がっている。しかし色は僅かに濁り、鮮やかさを損なっている。
「最初に試した試作品。ちょっと要求された品質には届かないかなあって」
アルトは、鍋の向こうに置いたままの、ラプトルのモモ肉を見やって意地悪く笑った。そして、今忙しく動き回って腹も空いているだろう店員達と、イングハムに聞こえるよう、呟いた。
「ラプトルのトマト煮とか、後で作っちゃおうかなって」
「聞かなきゃ良かった!!腹がすくじゃねえかよ!」
「そう思ったらお仕事に戻ったらどう?」
厨房に暫し笑い声が響くのだった。
一通り仕込みが終わったビスマルクの厨房で、彼女は壁に背を預け一時の休息をとっていた。
ビスマルクの店員達はそれぞれの寝床についたのだろう、其処にいるのは彼女くらいだ。彼女のやりたかったことも一段落済んでおり、大鍋は片付けられ何本かの大きな瓶にトマトケチャップが詰められていた。
「お、アルティコレート。帰ってなかったのか」
「ん……ぅ、リングサス?」
「おう、ちぃと仕入れの方で一悶着あってな。仕込みの方は……全部終わってんな、よしよし」
厨房に入ってきたのは、大柄なルガディンの男性であった。名前をリングサスといい、この調理師ギルドのマスターである。今日は外部で催しがあり店をあけていた店長は、厨房の片隅で眠っていたアルトに声をかけた。入り口から調理場へと降りながら、仕込みの進行度を確かめる。
「提督からお前さんに手紙だ、仕事みたいだぞ」
「……なに、わたくし指名?」
そうしてアルトの前までやってきて、手渡したのは確かにメルウィブ提督の封書であった。有り難がる事もなくその封を開いた彼女は、中身を読んで眠たい目を擦りながら立ち上がった。
「提督も意地悪ね。相手が相手じゃなきゃこのくそ忙しい時期断ってやりますのに」
「ほう?何が書いてあったんだ?」
彼女は答えない。代わりに、書面を見せて苦笑いした。
リングサスもまた、苦笑いを浮かべるのに然程時間はかからない。
黒渦に所属する、エレゼンの学者である彼女は……しかして、未だ多くのリムサの人々にとって、別の形で有名であった。
あるビスマルクの深夜。
仕込みに忙しいコック達が駆けずり回る傍ら、その調理場の端を借りて一人のんびりと鍋とにらめっこをしているエレゼンがいた。
明らかに仕込みでは無さそうなそれを咎める者は誰もいない。というのも彼女はビスマルクの従業員ではなく、客のいないこの時間を狙ってこのビスマルクに併設された調理師ギルドに顔を出す珍客であったのだ。
「よ、調子はどうだ」
「大分安定はしてきたわ。それでも、数が要るから時間は掛かりそうだけれども……」
ギルド員であり、店員であるヒューラン族の男性イングハムはそんな彼女に声をかけた。鍋から視線を外さず彼女は声に応える。イングハムは目的に集中する彼女から、鍋へと視線を移す。
果肉が未だ残る、鮮やかな赤い海。つんとした葡萄由来の酢の臭いと、僅かなシナモンの香り。木べらでゆっくりと焦げ付く事のないように煮詰められているのは処理済みのトマトピューレといった処か。ポモドーロソースのような、シンプルなトマトソースが現在主流であるエオルゼアに、彼女が今挑んでいるような味付きのトマトソースは馴染みが薄い。
トマトケチャップと呼ばれるトマトを利用した万能調味料。しかし、そのレシピは万人が知るものではない。
「50皿分だっけか?そんなに大量に要求してタラン爺さんとやらは何が望みなんだろうな」
「腕を試したいんでしょ?渡した料理をそのまま捨てられたら、ちょっとめげるけれども」
秘伝書、と呼ばれるレシピ集がある。その秘伝書と、もうひとつ、質の良い主道具を持ち込んだ流れの職人がいる。ただ職人は実力に煩い。秘伝書を得るにも主道具を得るにも、質の良い作品を求めてきた。
「まあ、渡した後どうなるかなんて気にしねえ方がお前の場合身のためかもな」
「そうね」
「処で、こっちはなんだ?」
自分の仕事は果たして終わっているのだろうか、イングハムは鍋しきの上に置かれている小さめの鍋に目をやった。中身は、似たような赤い海が広がっている。しかし色は僅かに濁り、鮮やかさを損なっている。
「最初に試した試作品。ちょっと要求された品質には届かないかなあって」
アルトは、鍋の向こうに置いたままの、ラプトルのモモ肉を見やって意地悪く笑った。そして、今忙しく動き回って腹も空いているだろう店員達と、イングハムに聞こえるよう、呟いた。
「ラプトルのトマト煮とか、後で作っちゃおうかなって」
「聞かなきゃ良かった!!腹がすくじゃねえかよ!」
「そう思ったらお仕事に戻ったらどう?」
厨房に暫し笑い声が響くのだった。
一通り仕込みが終わったビスマルクの厨房で、彼女は壁に背を預け一時の休息をとっていた。
ビスマルクの店員達はそれぞれの寝床についたのだろう、其処にいるのは彼女くらいだ。彼女のやりたかったことも一段落済んでおり、大鍋は片付けられ何本かの大きな瓶にトマトケチャップが詰められていた。
「お、アルティコレート。帰ってなかったのか」
「ん……ぅ、リングサス?」
「おう、ちぃと仕入れの方で一悶着あってな。仕込みの方は……全部終わってんな、よしよし」
厨房に入ってきたのは、大柄なルガディンの男性であった。名前をリングサスといい、この調理師ギルドのマスターである。今日は外部で催しがあり店をあけていた店長は、厨房の片隅で眠っていたアルトに声をかけた。入り口から調理場へと降りながら、仕込みの進行度を確かめる。
「提督からお前さんに手紙だ、仕事みたいだぞ」
「……なに、わたくし指名?」
そうしてアルトの前までやってきて、手渡したのは確かにメルウィブ提督の封書であった。有り難がる事もなくその封を開いた彼女は、中身を読んで眠たい目を擦りながら立ち上がった。
「提督も意地悪ね。相手が相手じゃなきゃこのくそ忙しい時期断ってやりますのに」
「ほう?何が書いてあったんだ?」
彼女は答えない。代わりに、書面を見せて苦笑いした。
リングサスもまた、苦笑いを浮かべるのに然程時間はかからない。
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