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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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柔らかい光が、瞼の向こうから降り注いでくるのを感じて、わたしは目を覚ました。磯の香りが、鼻を擽る。ゆっくりと目を開けると、どうやらリムサの宿のようだ。
上半身を起こす。刺繍の入ったカミーズと、長い靴下が付属のパンタレットはわたしの愛用の下着だ。灰色に染められたそれらの合間から、褐色の肌が覗く。

身を起こした表紙に視界を遮った銀の髪を長い耳にかける。
頭が軽いな、とはおもったものの……その位置に耳があることに違和は抱かず。
ゆっくりとベッドから立ち上がり、慣れた手付きで軽くストレッチして……



「……え?」



視界を上げると、姿見があった。




あの海のような蒼が抜けたかのような、光を跳ね返す銀の短髪。
頭ひとつ分は高いと思われる、背。
かつての白い肌を幾ら焼いても届かないだろう、褐色の肌。
深緑のような緑を……燃やしたかのような深紅の瞳。
発育のよい、幼さのないプロポーションと胸。
尻尾がないのに、わたしはバランスを保って鏡の前に立っている。

お気に入り、と思い込んでいたカミーズとパンタレット。よく見ればあんな日々があったとは思えない、綺麗な新品。

旅の日記の横にある、見たこともない灰色の高貴そうなローブを、わたしの頭はヴァンヤヒーラーローブだと、それもわたしの戦装束だと認識していた。


「どういう……これは……」


思えばわたしに宿を取るようなお金もなかった筈ではないか。こんな健康な体つきもとうの昔に失っていた筈。
反射的に手をあてた胸の、そのふくよかさと張りに目眩がした。
これはわたしなのか。



扉を開ける音がした。
驚いてそちらを振り返ると、其処には妖精を連れた女性がいた。
金の長い髪、長い耳。妖精を連れた、学者。金の瞳に、ふちを彩る緑のメイク。
わたしが憧れて憧れて止まなかった、平行世界のエレゼンの冒険者。では、やはり此処は……



「貴女は……」
「会いたかったわ、アンフェル!」


女性はそういって、驚くわたしに飛び付いた。叫ばれた言葉を、わたしの頭が、わたしの名前だと認識したことに気が付く。違う、わたしはそんな名前ではなかった筈だ。そう思っても、他の名前は浮かばない。わたしの名前として思い出されるのは、ひとつの単語だけだった。


「既に知っているのかな。わたくしはアルティコレートと申しますわ、これから宜しくねっ!」
「あ、アンフェルツィート、です……」







「そうだわ、アンフェル!貴女に紹介したい人がたくさんいるのよ。取り敢えず、ローブを着てもらっていいかしら?」
「あ、うん。大丈夫……少し待っててくれるかな」


動けば、身体が覚えていることをひとつひとつ思い知らされる。わたしは望まれるままにヴァンヤローブを着込む。軽い音を鳴らす木靴迄はいて、幼く恋する者の影を追う猫の姿も、みすぼらしく貧困から噴水に身を浸していた人の姿も、もはや辿り着けそうにないくらい、遠く、浮かばぬ影。


「ど、どうかしら、わたし……」
「似合っているわ、アンフェル!さあ、行きましょう新しい冒険へ」









飲めば、思うがままの姿に、変わることの出来る幻想の代償に。
変化を強く強く望みすぎたひとりのミコッテは、その耳も尾も失いました。ミコッテであった、名前さえ……
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