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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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黒衣森は、静かで柔らかだ。第二の故郷と言えるザナラーンの地は日は刺し夜風は凍るのだから、この優しい昼夜の時間差には最初驚かされたものだ。雨季の雨の多さを人伝に聞き、心弾ませたのもまた記憶に新しい。
しかし、ソーサラーと呼ばれる魔術師達はこれ程に動き辛いローブを着た上で時に全力疾走するというのか。
感嘆を覚えずには居られない。

そう、私は今、幻術士としてこのグリダニアの地に立っていた。



「それじゃ、今日は此処までにしておこうか。お疲れ様だよ、ウェント」
「ああ、何時もすまないな」


目の前にいるのは、額に傷を持つヒューランの男性である。何時もは鎧を纏っている彼も、今は柔らかいローブの類を身に纏っている。
彼の装いは魔術師らしさが目立つとんがり帽子に黒い前空きのローブ。バトルメイジと呼ばれるその装束は、一定層のソーサラー達にとって実力の証であり同時に憧れでもあった。


「もうそろそろ基礎は完璧かな。自由騎士の申し出に関しては俺の方から推薦しておきますよ」
「有り難い、助かるよアーサー」


アーサー=ラファエル。アルティコレートと私、共通の友であり自由騎士の称号を持つナイトである。その腕は現状最難関のひとつバハムートの迷宮の調査に置いても信頼してタンクを任せるに値する存在と私達が認識している程である。

そしてこの度騎士となる為の勉学を重ねるに当たって協力してくれる師でもある。その一環として、私の幻術士訓練もあった。当初はその予定はなかったのだが……


「しかし、驚いたな。まさか、ケアルが習得出来ないと呼び出されるとはね」


本来、幻術士は初歩として先ず土を持って敵を攻撃して足を鈍らせるストーンと癒しの初歩であるケアルの二つを学ぶ事が多い。しかし私は幻術士としての座学は十分に積んだ筈であるにも関わらず、ケアルを使うことが出来なかったのだ。



















「危なくなったら、私が癒すわ。だから、怖がらないで触れてみて」
「ああ……」

私に指導をしてくれたのは、何もアーサーだけではなかった。淡い水色のローブを纏う少女、シルフィーもまた協力者である。
自主鍛練と座学は怠らぬようにはしているものの、ストーンやエアロが使えるにも関わらずケアルを使うことが出来ない私の修業には誰かしら補佐につくことが多かったのだ。

何故ケアルが使えないのかに関して、私も道士達も分からずにいた。体内エーテル量が少ないという訳でもない。ルガディン族である私は元々種族柄ソーサラーは向かないとも言われているが、詩人であった頃私の其れが魔法の行使や詩人の歌の行使には問題ない量であるとも言われていた。自然を拒絶している訳でもなさそうだ。その場合、寧ろケアル以外の他の攻撃的な幻術の方が使えない事の方が多いとシルフィーは教えてくれた。
シルフィー自身がそうであったというのが、私としては驚きだ。精霊の声を聞ける彼女は、今は道士となる為の修業もしているらしい。


「このあたり……いたか」
「風の淀みね、気を付けて!」


形は違えど、力の一部を扱うことが出来ず、其れでもより上を望む私の姿を彼女は懐かしんだのだという。かつて彼女が一人の臆病なエレゼンに助けられたように、自分もそうしたいと。

二人で淀みを探しては、シルフィーに癒しの手を借りつつ、私自ら鎮めにかかる。自然と精霊の事を知るための地道な日々が続いていた。


石の礫に、スプライトは傷付き、力を弱めていく。風の刃は私の肌に裂傷を増やしていくが、癒しの力が柔らかく包み込み、塞いでいくのがわかる。少ししてスプライトが鎮まり、爽やかな風が歓喜を乗せて散っていくのを、シルフィーは自分のことのように幸せそうに目を細めて見送っていた。




「ウェントブリダ、いけそう?」
「……やってみる」


スプライトを鎮めた後は、ケアルの行使を試みるのが常であった。シルフィーが今一度自分にしてみせたように、シルフィーに癒しの術をかけることを試みる。少しでも自分の魔力を引き出せれば、もしかしたら成功するのではないか。そう考えたのだが、一瞬気が遠くなる思いがしただけで、ケアルは傷を癒すほどの力を発揮せず僅かな魔力の光がシルフィーに触れるのみで。


「……うーん」
「むうぅ」


二人して肩を落とす。
このままでは彼女の成長に間に合わない。私は心の中でひとりの少女の姿を描いては、自分の現状に心急く。


「取り敢えず、休憩にしましょ」
「それもそうだな、そろそろ昼飯時であることだし」


此処から一番近いレストエリアとなるとホウソーン家の山塞になるか。エーテライトのある拠点では冒険者向けの休憩所もある。テントのひとつに座り込んで弁当をひらいた。食生活を見かねたアルトから修業のある日にモーグリ便で届くお手製だ。


「じゃ、今日も有り難く貰うね?」


協力者を見越して二人分が包まれた風呂敷をひらいた処、其処から一人分ひょいっとシルフィーが取り上げた。はじめは遠慮していたものだが、今はこの通り。私より先に食べ出しては幸せそうな笑顔を晒していた。

「さてと、私も」


いただきます。料理を前に手を合わせてから同封のスプーンを手に取り箱を開く。腹持ちのよさそうなリゾットと、ピピラの蒸し焼き。冷めても美味しいのは流石であると思う。


「ご馳走さま、何時も通り宜しく伝えといて」

シルフィーが先に食べ終えたようで、器を風呂敷に戻す。別に急ぐ必要はないのだし、ゆっくりしていこう……そう思っていた。




この山塞に悲鳴の声が響くまでは。
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