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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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幻術士ギルド。
私は碩老樹瞑想窟から出てくるであろう、一人の女性を待ち構えていた。
ケープをアレンジしたかのような上着と、長い腰布を巻いたようなスカート。肌の露出は高いものの、厭らしさは決して感じさせない。
木靴が木の橋と鳴らす音色を、私は目を伏せながら聞いていた。森の音色が心地好い。

褐色の肌、灰銀の髪。
色の違う紅の瞳が、私に微笑みかける。

「御待たせ致しました、鬼哭のひと」
「たいして待ってもおりません、お気になさらず。……アンフェルツィート様」
「うん、分かっているよ。其処まで護衛、宜しくお願いします」

彼女こそが噂の人。
シェーダーの道士というだけで珍しいのに、幻獣ユニコーンを伴い、白魔法を会得し、センナ家の弟妹にも信頼されている。
かなりの重要人物であるのにはかわりなく、公の場であれば彼女にも護衛がつくのが常だ。
普段は神勇隊の管轄である。その上、彼女は冒険者として立つ際は護衛を拒む事すらあるために、私が護衛するというのは異例でもあるのだが。


――確かめたかったのだ。

彼女が別人であるというのを、他ならぬこの目で。



「にしても、珍しいね。センナ様が、都市の外で待ち合わせをするだなんて」
「あまり、公とはしたくない事柄であるそうですから」


今回、彼女は密談の内容を知らない。彼女を呼び出したのは、他ならぬ噂の真偽を確かめる為。
未だ、悟られてはいない。

悟られてはいけない。

「そっか……何だろ?想像つかないや」





何時もはユニコーンに乗る彼女も、護衛が居るときは馬車に乗ってくださるようにようやっとなってくれたのだと、何時か神勇隊の知人がこぼした事がある。
私の目の前で体操座りを崩したような座り方をそのままに、リラックスしているような、横顔に囁いた。


「馬車はお慣れになりましたか?」
「うん、皆揺れないように気をつかってくれているから」


それは、私達の知っている"ある日"の、丁度後のことで。
まだあの焦りと喧騒を……思い出す。



















道士、アンフェルツィートは冒険者の出。故に何時も都市に居るわけではないし、直ぐに呼び出せる訳ではない。しかし、ある程度の居場所は一匹のモーグリが知っており、彼女を探すのに困った事はなかった。


唯一度、を除いては。

『とんでもないクポ!アンフェルが自害するってボクをおいてって森からすら出ていっちゃったクポ!』

たまたま其処に高位の道士以外に居たのは私だけで、その件は直ぐに口封じがされた。実際彼女は精霊の誰もが居場所を知らず、彼女の愛馬も行方不明。
当時未だ裏役として動いてばかり、知るひとぞ知る著名人。自殺の証拠すら見付けられないまま月日は過ぎた。



『ご心配おかけしました』

結局騒動は、ある日唐突に彼女が戻ってきて幕を閉じた。彼女は自害予告などしていないし、知らぬといい、一匹のモーグリが道士達に怒られただけであっさり片付けられた。

ただ戻ってきた彼女は慎ましやかながら、別人のように明るくて。はじめは疑った者もいた筈なのに、何時かすっかり忘れていた……





「どうしたの?険しい顔……」
「……はっ、すみませぬ心配をお掛けして」

私達の行き先は十二神大聖堂。
其処には、あの日々見付けられなかった、大事な証拠が眠っている。












哀しまないで。
わたしが悪いのだから。
わたしが望むべきではなかったのだから。


そういって、わたくしめから目を逸らした一人の女性の姿を、わたくしは今も思い出す。



一人のシェーダーがいた。
父も母も、わたくしは彼女からその存在を聞かされた事がない。
ふらりとグリダニアの地を訪れ、冒険者として名を記した彼女は、けれども専ら、森の何処かで密やかに祈りを捧げるばかりであった。
わたくしともその最中に出逢い、彼女の献身に付き従う事にしたのだったか。


彼女は迫害を受けていた。
シェーダーの流れ者。
それは、あまり好まれぬ要素の塊であった。ただ彼女が虐げられる事に何も物申す事がなかったから、それが表になることはなかった。
最後まで。




彼女が白魔道士となり、その名は一般人のものとは到底言えなくなり、彼女への陰湿なそれは加速した。そして、とうとう……



彼女は彼女の好きだった海に身を投げるのだと言った。付き従っていたモーグリに、自害することだけを伝えるよう申し付け、彼女は自室を後にした。その自室に、鍵がわりの結界を張る。誰も、その部屋の存在に気付けぬようにと。
とても直視出来ないストリップな衣装は、彼女のシェーダーらしさを引き立てる。その上に一枚だけ森色のカウルを羽織って、彼女が伝説の白魔道士にはとてもじゃないが映らない。

わたくしめにも、黒い布を被せ、そっとわたくし達は森を出た。
彼女はわたくしめに外地ラノシアの隠者の庵までいくように指示をした。断る権利は、わたくしめにはありはしない。




断崖絶壁。
其処に流れる滝。
折れた大きな橋のようにも見える突き出した木の足場に、彼女は立った。

わたくしからはもう降りていて、何処へとでも行きなさい、と言われたが。わたくしは庵の影から彼女を見詰め、目を離すことが出来なかった。

そっと彼女が道士服を羽織り、帽子を被り。先に残った荷物を崖の下へ放り投げた。気持ちが抑えられなくて、わたくしは彼女のもとへ駆け出そうとした。



しかし同時に飛び降りた彼女。
わたくしが留められたのは彼女の帽子のみで……




無情な水音が、ただ響いた。
言葉を交わせぬ獣の身を、どれだけ嘆いたことだろうか。
このユニコーンの身でなければ、彼女を止める楔となれただろうか。









失意の日々が続いた。彼女が身を投げたラノシアの海の傍らを歩む日々。何時しか彼女が流れ着きやしないかと、ただただ待ち続けた。

聞こえてくる、低い角笛の音。
とうとう幻獣にも幻聴が聞こえたか、と独りごちて駆け出した。幻聴に応える理由はなかったけれども、気が付いたら身に染みた癖のように駆け出していた。
中央ラノシアのある川に掛かる橋の上に……

わたくしめは、彼女でない彼女をみた。

「ユニコーン……!」

身姿は、海に沈んだわたくしめの彼女と殆ど変わらぬ姿をしていた。ひとつ、彼女の両目の赤が異なって見えたくらい。嬉しそうに彼女はわたくしめを抱き締めるなされ……震える声でわたくしに問うた。

「アンフェルツィートとして生きていくから、どうか私に力を貸して……」


彼女は、わたくしの知る彼女ではなかった。同じ身、同じ力、しかし本当には違う名を持っていたという、謎の存在。
誰もが彼女をわたくしの主の彼女として認識しているのを、わたくしは彼女の横で見た。彼女もそれを分かっているのか、努めてそう振る舞い、応じてきた。
やがて、彼女の彼女らしい処はひとつずつ抜け落ちていき……彼女は本当に主の彼女になりきってしまったように思えてきた。


はじめは頻繁に溢していた、昔話。彼女が猫であった話も、何時からかしなくなり。彼女が違和感を感じるような口調で話すことも減っていき。
わたくしは危機感を覚えた。
このままでは、『彼女』が消えてしまう……

だからわたくしめは話しました。彼女と『彼女』の二人のことを、一匹のモーグリに。きっと酷い裏切りだと、どちらも怒るでしょうけれども……
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