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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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ドマの国にあると噂される、スティッキーライスより太く肉厚で豊かだと言われる米。カミサマはそれを知るようで、事細かにその魅力を語ってくれたものだが、生憎と手持ちはない。

代わりに、彼女の提案で今回は麦飯になった。パンよりも、マリネや煮物の味の方を楽しめるだろうとの考えではあるけれども……カミサマとの、二人がかりでの麦飯研究の成果を表に出すのは、此れが初めてでもあった。





「今回は公的なものではありませんし、わたくしとしても冒険しているものが幾つか御座いますわ。皆様のお口にあうといいのですが」

食卓に並ぶのは、ゲゲルジュやディルストヴェイツ、わたくしを知る物好きのメイド達。とはいえ、その人数は高位な者にどうしても数が限られ、その内の一人、演奏家のエレゼンの女性と、舞踊指導者のルガディンの女性が満足そうに微笑み返していた。

サシャの方はというと、柄にもなく緊張しているのか頬先の角張った微笑みに、尻尾が絶え間無く揺れている。ゲゲルジュが可愛いのう、と言うのには、やりませんからねと冗談っぽく返してやった。

「御主の独占欲は他人の比ではないからのう、流石のわしもかっさらおうとはせんよ!」
「ふふふ、貴方は本当に良き理解者で助かりますよ」

サシャの隣の席に腰かけて、わたくし達は魔法の呪文を唱えるのです。

「いただきます」


ってね♪













冒険の山であったディナータイムも問題なく事が済み、わたくし達は宛がわれたテントへとひきあげる。相変わらず、真ん中に大きなダブルサイズのベッドが存在感を主張するシンプルな貸出し用寝室へと引き下がる。ひとつの布団にくるまって、帰りの船の出る朝まで一晩を過ごす。


「サシャ」
「んー?」


自分ひとりのベッドの中より、暖かい温もり。少し丸まって寝ているもうひとりの姿に、愛しさを覚えながら、名前を呼ぶ。

「手、出して貰えるかしら」
「こう?かな?」

布団の中から出てきた白く綺麗な彼女の手首に、わたくしはそっと紐を結んだ。わたくしの髪色のようにしなやかな金糸と、サシャの髪色のように澄みきった銀糸の絡み合った紐の輪。

「本当は足につけるものらしいんだけど、擦りきれて知らぬ間に無くしてるのは何だか寂しい気がして」
「おお……?」


結んだのは、ミサンガの紐だった。金糸と銀糸でみつあみにされた美しい糸の束。


「二人の髪をモチーフに、って行きの船乗りさんがくださったのよ」


形あるものは、これっきりであるけれども。どうか良ければこれから先、サシャの心の中、思い出として今日とわたくしの記憶がかたちを残したら嬉しいな、って。


「サシャ、今日は有難う」

布団の中のサシャを強くだき寄せて。いまは二人とも横になっているから、二人の肩が触れ合う。海辺の夜は肌寒い、けれど、この空間は暖かい。

「アルティ?」
「ごめん、この方が暖かそうだったんだもん」


誰かの下に下るより……
わたくしはこうして気儘に好きなものを愛していたいのだろう。

そっと目を閉じる。
わたくしの謝罪に、くすりと笑ったサシャが、前髪を撫でる感覚が強く意識させられた。このまま抱いたまま眠ってしまおうか、そんなことを考えるわたくしの額に触れる柔らかな熱量は。

驚いて目を開け、視線で問うも、言葉の代わりに満面の笑みではぐらかされた。
その代わり、腕を背に回されてより密着するとまるで寄り掛かるようなかたちで目を閉じた。


嗚呼、暖かい。
こうやって抱き合って眠る贅沢を、一身に感じながら……優しい微睡みに迎えられていた。













帰りは客船に乗っての帰路だった。わざわざ個室まで用意していただいて、寒さが平気であった分、気が付いたら朝の睡魔に負けて転た寝してしまっていた。

サシャはどんな表情でそんなわたくしを見ていたのだろう。




下甲板でサシャと別れて。
暫し感謝のハグをして。名残惜しさを抱えながらも、早朝の商店街をエーテライト・プラザへ駆ける。プラザ傍の螺旋状の坂を上れば、わたくしの第二のホームだ。


「おう、帰ったかアルティコレート!」
「ただいま、リングサス」


扉を開けると、店の監督をしていた店長が迎えの挨拶をしてくれた。満面の笑みで返事を返す、わたくし。


「助言有難うね、どうだった?」
「ああ、諦めて帰っていったぞ。其れなりには食い下がられたが、『あいつが会いたがらなかったんだからそういうこった』、と追い払ったさ」

店長の返しにわたくしは満足そうに頷いた。この店長のお陰で、これからもわたくしはわたくしの心のままにスキレットを振るうことができるだろう。


「バカンスは楽しかったか?」
「勿論!収穫もありましたしね」

珍しく履いたサンダルが、露出させる足首に。
金糸と銀糸の織り込まれたミサンガが控え目に光を跳ね返して煌めいていた。
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