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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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晴れ渡る快晴の空、日の光を跳ね返して銀色に輝く波、深く魅入られるような青い海。

そしてその海に浮かぶ巨大漁船。


「どう?此処まで海の上へ歩み寄る機会はそうないと思うの」

巨大漁船の甲板の船尾は、レストランが併設されていた。昼飯はあのフライングシャークのディルストヴェイツの作らしい。
船に乗る前にも挨拶はしにいったのだけれども、どうも明け方ゲゲルジュに御挨拶にいった後、彼から私の来訪を知らされていたらしく私の為に腕を振るいたいと言われたのだ。

「うん、そうね。こんな綺麗な青が広がっていたんだあ……」


感嘆の溜め息をサシャがつく。船尾の端、一番海が近く見える特等席が指定席として与えられていた。一度船が揺らぎもすれば危険な場所でもあるのだが、視線を少し外せば邪魔にならない場所に船員か警備員が控えているのが分かる。


「そうよ、この青の中に魚達は生きているの。けれども、この青の美しさを楽しめる生き物は多くないわ」
「え、どうして?」

私達はつい、自分の知る五感を他の動物にも当てはめがちだけれども。実際はそうではないらしい事を、聞いた事がある。


「海を青と認識出来る……それって全ての生き物の出来る事では無いそうよ」

私達は、豊かだと思う。
食物の辛味や苦味の多くは、食われない為の動植物自身の工夫だ。それすらも、美味しさとして調理出来る逞しさよ。

対面する絵描きである彼女は、表情に分かるほど驚いて、それから、少し嬉しそうに笑った。

それなら尚更、この素晴らしさをより伝えられる者でありたい、と。





「ところで、どうして飛び出して来たの?」

穏やかな海のように、ゆったりとした自由時間。手の込んだ料理に二人舌鼓をうちながら、話は弾む。


「縛られそうな気がしたのよ。専属って私好きじゃない」


好きな時に好きな人の為にスキレットを振るえないじゃない。そう口を尖らせて愚痴って見せると、サシャが小さく噴き出すように笑いだした。

「ちょっ、アルトちゃんの拗ね顔可愛いっ」
「だ、だってー!独占はしたいけど独占されたくないんだものっ」

慌てて弁明を試みるが、必死さがツボにハマってしまったか暫し可愛いコールは止まないのだった。

……満更じゃなかったけど。
悔しかったので、それは言葉にしない事にした。








日は頂点を下り、船も港へ戻る方向に舵を取り始めていた。席を立ち船尾に寄り、より近くに海を見るサシャの姿。

青く透き通った海に、時折黒い魚の影が現れては気ままに去っていく。風の香り、海の輝き、五感を通じて感じる水の世界の素晴らしきこと。ただ日が傾き始め、冷たさと塩気を孕んだ風に身を震わす背中を、そっと抱き締める。

すっぽりと覆われてしまったその身がいとおしい。ただ尻尾だけが自由気儘に、まるで相互に絡み合うかのようにわたくしの背中に回される。

恐怖は抱かない。ただ、もう少しだけ近くにありたくて。嬉しそうに見上げてきた彼女にかがみ込み、気付けばそっと口付けていた。












「あんたほんと尻軽とか言われても知らないわよ!?」
「ミスティカ、決してわたくしはとって食おうとかそんなつもりはないのですから」

夕暮れ、本来はゲゲルジュの使用人達が働く厨房の一角に、わたくしとわたくしのリテイナーがいた。
彼女はミスティカという茶髪のミコッテで、食材をわたくしに代わって管理してくれている大事なパートナーだ。

「ほんっとプレイガールなんだから、行き遅れるわよ」
「妥協なんてしないから良いのよーだ」

彼女に持ってきて貰ったワイルドオニオンやオリーブオイルを使って、作るのはサーモンのマリネだ。本当はスモークしたものを使うのだけれど、このコスタでは身のしまった新鮮なサーモンが取れるから、そっちにすることにした。

香り付けのバジル、甘酸っぱさを足すハニーレモン。レモンのメインはレモン汁の方だけれど、折角なので身の薄いスライスも盛り付ける事にした。


でも、メインディッシュはボイルドブリーム。桜色の魚、ビアナックブリームを使ったまろやかな煮込み料理だ。カミサマには、「そんな鯛を茹でちゃうの!?」と驚かれた事があるけれども、どうやらカミサマには、これに良く似た魚で鯛という魚がおり、それがもう蒸すように焼いて塩を振るだけで十分に旨いのだとか。

この魚、冒険者の間でもあまり食されないけれども。わたくしもかなり美味しい部類だと思っている。

今回のスープはそんな魚の淡白ながら濃厚な旨味を損なわない、あっさり目のミッドランドキャベツのスープ。チキンストックをベースに、フィンガーシュリンプの香ばしさと塩胡椒のアクセントが広がるだろう。




ゲゲルジュには勿論、サシャにも楽しんでいただけるとよいのだけれども。
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