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作中の『カミサマ』とは、Articolato Rosatraum Waentbryda Sterwilfin White Mithra Oblige Saccade のプレイヤーのこと。  
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動かない身体。傍観者へと、変わっていく我が意識の立場。急く心が、視界を彷徨う。
視界の端に、見慣れた剣が“落ちて”いることに気が付いた。あれは拾ったはずの私自身の剣では無かったか。驚いて、手の内の剣を確かめる。

黒光りする、黒曜石のように美しい刀身が其処にはあった。

――これは、斬鉄剣?どうして私の手の内に!?

いつの間にか、紺青のキュイラスを纏っていた筈の我が身もまた黒い重鎧が覆っている。この鎧も、この剣も、オーディンのものだ。そして、この今の私の立場は、よもや。


最悪の事態に目の前が真っ暗になりそうだった。私がそう思っていても、身体は動じる事無く傍らへ現れた馬の背にまたがる。
考えられる、結論はただひとつ。

私はオーディンに憑依されたのだ、と。




闘いの場では特徴的な兜を被っていたオーディンだが、闘いがなければそうすることもないらしい。
愛おしむように愛馬を撫で、オーディンの意志で深夜の森を彷徨う。
オーディンに影響を受けて現れた、薄ら青い光の靄のなか、静かに歩むのは幻想的な散歩であった。
オーディンと私の視界は、彼の意思の為にゆっくりとあたりを見わたす。何かを探して彷徨うのだと、言われている伝承の通り……だが、それが何なのか、私には知ることが出来ない。

ただ、彼が思っているより闘いだけの存在ではなかったことを依り代にされながら感じていた。しかし、伝承の他に拠り所なく、信者も無き蛮神、オーディン。彼は何を己を保つ柱とし、何のために黒衣森を彷徨うのだと。





独りごちた、心の呟きに、別なる意識は応える事は無い。
聞こえているのだろう?そう問うても、一瞬歩みを止めた他は、オーディンが応える事は無かった。

歩みの先に、一人の影が飛び出してきた。その姿を見て、私の心は再び焦りを抱く。装いは双蛇の其れだ、それだけで今の状態では宜しくないのだが。
薄のように明るく煌めく金の髪、落ち着いた樹木の幹の色に染めたかのような茶色のハット。槍を背負った、その姿は、私達の知己――

オーディンが、剣を。彼女が、槍を。私の視界は形作られた漆黒の兜に閉ざされる。友との闘いを見ずに済むようにと言わんばかりに。この正体を見せぬようにか。










私が次に意識を取り戻したのは、双蛇の砦の中の救護室であった。
見慣れた銀髪の道士と、最近友となった金髪の竜騎士が、それぞれ違う心配の表情を見せていた。


「ウェントちゃん!?よ、良かった……」
「大丈夫?オーディンをしりぞけたと思ったら、貴女が倒れていたからびっくりしたのよ」


私が、ちゃんと私のままでいられていることに安心した様子のふたりに、私は事の顛末を語る。

「オーディンが、ウェントちゃんに……」
「にわかには信じがたい話だけれど、事実倒れたオーディンから満身創痍の貴女が出てきてるからね……」


言葉を交わす事も無かった、我が身を借りていた存在に思いを馳せる。
蛮神オーディン。
彼はまた違う依り代を使って、この森を彷徨っているのだろうか。

「まあ、今は対策のしようも無いか。我が身の無事を喜ぶべきかな」
「ほんとだよ……気を付けてね、ウェントちゃん?」

一体何を探してか。未だ、分からぬまま……
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